23日目:夜空の誓い
その日は珍しく、美咲が「遠回りしよう」と言った。
二人で歩いて辿り着いたのは、小高い丘の公園。
夜空が一面に広がり、星々が瞬いていた。
「わぁ……すごい」
美咲が見上げて、両手を広げる。
夜風に髪が揺れ、頬にかかる。
その姿は、星空の一部みたいだった。
「悠真、願い事は?」
「願い事?」
「流れ星が見えたら、三回唱えるんだよ。ほら、定番でしょ」
俺は空を仰ぎながら、苦笑した。
(願い事か……叶うなら、あと一日でも長く)
けれど、その願いを口には出せなかった。
「私ね、夢が叶ったら――」
美咲は静かに続ける。
「自分の保育園を作りたいんだ。小さくてもいい、温かい場所」
その声は希望に満ちていて、胸が痛むほど眩しかった。
「悠真は?」
「……俺?」
「うん。もし、叶うなら、どんな未来がいい?」
答えられない。
残された時間が、あまりにも短いから。
沈黙に気づいた美咲は、そっと笑った。
「じゃあさ、約束しよ」
「約束?」
「もしお互い夢が叶ったら、絶対報告しあうこと」
伸ばされた小指が、夜空の下で光った。
俺はその指を見つめ、胸の奥が締めつけられる。
(叶えられない約束……それでも)
俺はゆっくりと、小指を絡めた。
「……約束だ」
美咲は嬉しそうに笑い、その笑顔を星空が照らしていた。
夜、病室。
ルカが問いかける。
「今日の奇跡は?」
「……何も使わなかった」
「だが、あなたは奇跡を信じていた」
窓の外に広がる星を見ながら、俺は小さく呟いた。
「約束も……奇跡みたいなもんだろ」
残り七日。
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