19日目:教室の告白

昼休みの教室。

美咲は窓際の席で、親友の彩香と小声で話していた。

その表情は真剣で、時折視線が俺の方へと揺れる。


胸がざわついた。

彼女が俺を見ている気がして、けれど近づけない。

耳を澄ましても、声は雑踏に紛れて届かない。


やがて、彩香の目が大きく見開かれた。

「……え、本当に?」

美咲は小さく頷いた。

そして、ほんのり赤い頬に手を添える。


(……告白?)


心臓が跳ねた。

でも、相手が俺かどうかは分からない。

勝手に期待する自分が、嫌になる。




放課後。

机の上で彩香が美咲に囁いた。

「勇気あるじゃん。私、応援するから」

「ありがと」

美咲は少し照れ笑いを浮かべた。


俺は視線を逸らし、荷物をまとめる。

――聞きたくない。

けれど、耳が勝手に拾ってしまう。




病室の夜。

「今日の奇跡は?」とルカが尋ねる。

「……使わなかった」

「理由は」

「知りたくなかったからだ」


ルカは無表情のまま、しばらく俺を見つめた。

「告白は人間にとって大きな行為。けれど、それを制御するのは危うい」

「分かってる。だから何もしなかった」


胸の奥で、答えの出ない思考が渦を巻いていた。

彼女が打ち明けた“秘密”が、俺の想像通りであることを願いながら。

そして同時に、それを恐れていた。


残り十一日。

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