品田（28）

2年前に働いてたコンビニで起きた話なんだけどさ、聞いてくれる？

俺さ、時給がいいからって理由で深夜にそこで働いてたんだよ。客も全然来なくてさ、ひとりで自由気ままに過ごしてたんだよね。

そんで働いてから3ヶ月ぐらい経った頃かな、怪奇現象が起こり始めたんだ。

最初は自動ドアが開いて入店音が鳴ったんだけど、店ん中には俺以外誰もいないんだよ。それが毎日続いてて怖かったわ。でその次はトイレの水が溢れ出すっていう超迷惑な現象。床びちゃびちゃで掃除クソめんどかった。

そしてその後に起こったのはマジでヤバいんだけどさ。

その日は歴史的豪雨で客なんて1人も来なかったの。

ラッキーって思って品出ししながら奥の雑誌コーナーで立ち読みしてたんだけどさ、ふと窓を見ると女の人が立ってるワケ。

雨宿りかなってそん時は思って、また雑誌に目を向けたんだ。暫くしてなんか視線を感じて顔を上げたらさ、さっきの女こっち見てやがって。その顔がまあ不気味で、めっちゃやせ細ってて目と口が異常にでかい。ギョッとしたけど、「サボってるの見られた！」と思って雑誌を閉まって仕事に戻ったんだ。

その後レジに戻ってしばらくぼーっとしてたんだけど、またなんか視線を感じてね。

さっきの奥の雑誌コーナーの窓に目を向けたら、あの女がまだこっち見てんだよ。

気味悪かったけど気になってさ、外に出て濡れたくないんで中から「どうしたんすか？」って聞いたんだよ。

そしたらその女じーっとこっち見たままさ…

――どんどん体が溶けてったんだよね。

顔から、肩から、ロウソクがどんどん溶けてくみたいにさ。

雨粒と共にガラスに沿ってドロドロ溶けてって、白い塊になってって…

俺は恐怖で動けなかったよ。だってありえないじゃん

そしてその女が溶けていく瞬間さ、店内のBGMにノイズが走って、サイレンみたいなのが流れたんだよ。まあ、あの戦争の時みたいな。

もう何が起きてるかわかんなくなって頭真っ白になってさ。

暫く放心状態でずっとそれを見てたよ。

気づいたらその女は跡形もなくなってた。BGMも元のアイドルの曲に戻ってた。

でも俺その後事務所から出られなかったよ。

客来ても出れなくってさ、そのあと店長にクソ怒られまくったわ。

そんで、その２日後ね。

そのコンビニの駐車場が地盤沈下で崩れてさ、中から1人の白骨遺体が発見されたんだよ。

あの女と関係あるのかなー、まあ考えたくないや。

だってその後は何も起きなかったし笑

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい