あなたがくれた最後のプレゼントは、ワンフレーズの言葉だった。
「自転車に乗って あてもなく二人きりで あなたの後で ゆられてたい」
ハルとエリ。幼馴染だった二人は、幼稚園の頃からずっと一緒。
つまったスケジュールをこなしていく毎日の中で、
二人は色んな事を話したけれど「好きだ」って事は言えなかった。
だから、あの日生まれた恋心は、手を伸ばしても、もう届かない。
それでも、時計の針は気にせず動き続ける。
二人が夢見ていた遠い未来。そして、恋の行方。
それは時間に押し流されて、やがて遠い夢の中のように、空に消えていく。
だけど。いつまでも忘れない。
まるでロードショーみたいに、ハッピーエンドにしたいから。
* * *
ロードショーは、もともと『地方興行』という意味だったらしい。
地方。そう、地方だ。
地方の若者は、自分の夢を追うため、都会に出る。
地方の若者は、自分の道を歩くため、地元に残る。
きっとハルとエリの物語は、この国の、どこにでもある地方の、どこにでもあるちっぽけなお芝居なのだろう。
だから、春が来るたびに、この国のどこかで新しいハルとエリが生まれている。
それは、あなたの街ですれ違う誰かかもしれない。
それは、あなたの隣に引っ越してきた誰かかもしれない。
それは、あなたかもしれない。
90年代バンドブームの象徴 JITTERIN'JINN の名曲から生まれた、大人のための作品です。