カルテ
出雲中央総合病院 精神神経科 入院カルテ(抜粋)
患者名:山崎 良成(仮名)/40代男性
年齢:35歳(1979年生)
診療科:精神神経科
記録期間:2014年2月~3月
主治医:佐藤一樹(精神神経科 医長)
担当看護師:高橋真理、岡本隆史 他
初診日:2014年2月28日(金)
初診記録(外来)
主訴:「夜になると後ろで笑う声が聞こえる」「影が二つに見える」
現病歴:患者本人が妻に伴われ精神科外来を受診。3週間ほど前から不眠を訴え、ここ1週間は「誰かが自分を見ている」「笑い声がする」と話すようになった。日中も集中力が続かず、仕事中に急に立ち止まるなどの行動が出現。本人は被害感を強く訴えるが、幻聴・幻視の可能性が高いと判断。精神状態の悪化を考慮し、即日入院の方針を説明。患者・家族とも同意。
所見:外見はやややつれた印象。発語は保たれているが、周囲を警戒しており頻繁に後方を振り返る。幻聴様の訴えあり。見当識は一応保たれるが、注意力に揺らぎがある。
診断名(暫定):統合失調症エピソード疑い。
処方:リスペリドン2mg開始。睡眠導入剤としてゾルピデム5mgを頓用。
入院1日目:2014年2月28日(金)夜間
看護記録(夜勤:高橋)
20時:入院手続き後、病棟に案内。病室は4人部屋だが本人希望でカーテンを閉じたままにする。
21時:服薬後も落ち着かず、天井を見上げ「ここにもいる」と発言。幻視様の訴え。
23時:トイレに行く途中で立ち止まり、壁を指差し「笑ってる」と繰り返す。周囲には異常なし。
02時:ようやく就寝。ただし寝言が多く、時折「やめろ」と声を出す。
入院2日目:2014年3月1日(土)
看護記録(早番:岡本)
06時:覚醒。表情硬く、周囲を警戒。食事は半分摂取。
09時:廊下を歩きながら「自分が二人いる」と発言。質問すると「俺じゃない俺が後ろに立ってる」と説明。幻覚内容が固定化しつつある。
12時:昼食時、食器を落とし「もう一人が触った」と訴える。
15時:主治医診察。「声が重なって聞こえる」と訴える。抗精神病薬の増量を検討。
18時:夕食は8割摂取。服薬は指示通り。
夜勤(高橋)
22時:病室で独語あり。「聞こえる、聞こえる」と繰り返す。
01時:廊下に出てきて「影が重なった」と興奮。落ち着かせ病室へ誘導。
03時:入眠。
入院3日目:2014年3月2日(日)
看護記録(早番:岡本)
07時:起床。洗面中、鏡を凝視し「二重になってる」と発言。
10時:面会に来た妻に「お前の後ろにもいる」と訴え、妻動揺。面会15分で終了。
12時:食事摂取6割。発語増加。内容は一貫して「笑い声」と「もう一人」。
14時:休憩室で突然立ち上がり、誰もいない方向を指差して笑う。周囲患者驚く。
16時:主治医診察。リスペリドンを4mgに増量。妻へ説明、理解得られる。
20時:就寝準備。落ち着きは一時的に見られるが、独語持続。
入院4日目:2014年3月3日(月)
看護記録(早番:岡本)
06時:起床。夜間は2回覚醒し、ナースコールで「背中に誰かが触った」と訴え。異常所見なし。
09時:朝食7割摂取。会話中に「声が重なる」と繰り返し訴える。
11時:病室の窓をのぞき込み「外にも俺がいる」と述べる。幻視持続。
14時:作業療法に参加。紙を切る作業中、突然はさみを投げ「向こうが笑っている」と叫ぶ。危険行動のため中止。
18時:夕食摂取5割。服薬問題なし。
夜勤(高橋)
21時:消灯後もカーテン越しに「見えてるんだろ」と独語。
01時:廊下に出て「二つの声が呼んでいる」と発言。再度病室へ誘導。
入院5日目:2014年3月4日(火)
看護記録(早番:岡本)
07時:起床。顔色不良。食欲低下し、朝食2割のみ。
09時:主治医回診。「声が二重になって消えない」と訴える。抗精神病薬に加え、抗不安薬ロラゼパム1mgを頓用指示。
12時:服薬後、一時的に落ち着く。昼食摂取6割。
15時:ナースステーション前で立ち止まり、床を指差し「足跡が二つある」と説明。確認するが異常なし。
18時:夕食摂取4割。
夜勤(高橋)
23時:トイレに行く途中、鏡を見て「俺じゃない方が笑った」と興奮。落ち着くまで介助。
02時:眠剤追加し入眠。寝言で「帰れ」「お前じゃない」と繰り返す。
入院6日目:2014年3月5日(水)
看護記録(早番:岡本)
06時:起床。夜間睡眠浅く、疲労感強い。
10時:面会に来た弟に対し「化けてるんだろ」と発言。弟動揺、面会短時間で終了。
12時:昼食摂取5割。スプーンをじっと見つめ「二つ映ってる」と訴える。
14時:休憩室でテレビ視聴中、「入ってくるな、やめろ」と言い出し、耳を塞ぐ。
16時:主治医診察。症状持続。クロザピン導入検討。
18時:夕食摂取3割。
夜勤(高橋)
22時:廊下で独語「もう一人が呼んでる」。ナースコール連打あり。
01時:看護師の姿を見て「影が二つ」と叫び、興奮。鎮静薬投与。
入院7日目:2014年3月6日(木)
看護記録(早番:岡本)
07時:起床。食欲不振。朝食摂取1割のみ。
09時:病室の窓から外を凝視。「あそこにいる」「もう一人が笑っている」と説明。
11時:廊下で突然立ち止まり、「後ろで笑ったろ」と看護師に詰め寄る。落ち着かせ病室へ。
13時:昼食摂取2割。体重減少(入院時より1.8kg減)。
15時:病棟内巡回中も常に後方を振り返り「影が離れない」と訴える。
18時:夕食はほぼ摂取せず。
夜勤(高橋)
22時:病室で「もう一人の俺が寝ている」と話し、ベッドを二度見する。
00時:落ち着かず廊下を徘徊。笑い声を探すように動く。
02時:鎮静薬投与後、ようやく就寝。
入院8日目:2014年3月7日(金)
看護記録(早番:岡本)
06時:起床。表情硬く、無言で朝食に向かう。摂取2割。
09時:主治医回診。「影が俺で動いている」と発言。自室の壁を指差し「笑っている」と説明。壁面確認するも異常所見なし。
12時:昼食摂取4割。スープをじっと見つめ「揺れてるのは俺じゃない」と独語。
14時:病棟内歩行。後方を気にしながら小声で「やめろ」とつぶやく。
17時:夕食摂取3割。服薬問題なし。
夜勤(高橋)
22時:病室で「耳元で笑っている」と訴え、頭を抱え込む。
01時:消灯後も独語続き、ナースコール押下。対応時「いやだと言っているだろう、やめて、やめてください」と訴える。鎮静薬投与。
入院9日目:2014年3月8日(土)
看護記録(早番:岡本)
07時:起床。顔色蒼白。朝食ほぼ摂取せず。
10時:病室の鏡を覆うよう依頼。「映るのが俺じゃない」と強い恐怖感を示すため布で覆い対応。
12時:昼食摂取2割。食事中も周囲を見回し「笑い声が近い」と訴える。
15時:作業療法不参加。ベッドで天井を凝視し「声が重なって聞こえる」と説明。
18時:夕食摂取1割。
夜勤(高橋)
22時:廊下を徘徊し「笑っているのはそっちだろ」と叫ぶ。病室に誘導。
02時:病室内で急に立ち上がり「もう近づかないで」と大声。鎮静薬使用後に再入眠。
入院10日目:2014年3月9日(日)
看護記録(早番:岡本)
06時:起床。食欲著しく低下。朝食摂取なし。
09時:主治医診察。「声が二重で消えない」「影が俺の動きを真似して笑っている」と説明。症状悪化確認。投薬増量指示あり。
12時:昼食摂取1割。スプーンを持つ手が震え、落とす。
15時:談話室でテレビを見ていたが突然立ち上がり「今笑ったのは俺じゃない」と叫ぶ。他患者驚き。制止し病室へ。
17時:夕食摂取なし。表情硬直。
夜勤(高橋)
21時:病室で独語「やっと」と繰り返す。
23時:布団を二組並べ「ここにおいてくね」と言い張る。看護師で片付ける。
02時:廊下を徘徊。
入院11日目(失踪日):2014年3月10日(月)
看護記録(早番:岡本)
06時:巡回時、病室に患者不在を確認。窓・ドア施錠異常なし。病棟内及び周辺を緊急捜索。発見できず。
07時:警察へ通報。病院内監視カメラを確認したが、午前4時頃を最後に病室から姿が確認できず。カメラ映像には不自然な点(映像ノイズ)が一時的に記録されていた。
警察連絡記録
08時30分:地元警察署員到着。病棟及び周辺区域を調査。院外に出た形跡は認められず。
12時:病院周辺河川敷、林道を捜索するも発見に至らず。
看護師メモ(高橋)
「最後に確認した際、病室は静かで、患者は就寝中と思われた。しかし布団は乱れておらず、人が横になった形跡はなかった」
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