第1章 その1
奈良から平安初期、東北は荒れていた
各部族も争っていたが、西の大和はそれら全てを統一し、大和に従わせようと武士団を送り込み何度も制圧を試みていた
その部族の中でも大和に対抗するため、早くから団結の必要性に気付き、滅ぼされた部族の生き残りや子供達を引き取り育てていたのが若き阿弖流為(あてるい)のいる蝦夷(えみし)一族だった、父は
「わしの処に来たからには皆 蝦夷じゃ、
わしが守る、安心せい!」
そう言って皆を育てた
各部族は何故か父親の髪色が受け継がれていった
山桜を守り神にする桜族の髪は桜色で
運動能力が異常に優れている
橙色の山百合を守り神とする橙族は橙色の髪で猪を指笛で操り、猪の背中に乗り俊敏に動く礼儀正しい者達だ
呉竹を守り神とする竹族は緑の髪で、風を読み星に時を聞き、学問全般に秀でた部族で研究熱心だ
曼珠沙華(まんじゅしゃか)を守り神とする沙華
(しゃか)族は蓮沼近くに住み、赤い髪で、薬になる木の実や草花に詳しく医術や薬膳に精通し、神事や大和の仏教にも詳しく皆から頼りにされた
藤を守り神とする藤族は紫の髪で、藤の幹やツルで生活やいくさに役立つ有りとあらゆる物を作り出すと共に、そのツルの様に皆を繋ぎあう穏やかで大切な部族だ
青く澄んだ泉の水を守り神とする青龍族は青い髪で青龍の使いとされ、牛や馬や有りとあらゆる生き物と唄う様な会話が出来た
海から助けた口のきけない黒髪の子はクロと名付けられ、桜族のサクと共に騎射(きしゃ)の名手に育っていたが一切口をきかなかった
そして阿弖流為とその父は、その大地全てを守り神として崇拝し神の大地と呼んだ
昔から神の大地の守護「蝦夷一族」と恐れられ、髪は金色(こんじき)だった
母は銀山を守り神とし、大和に滅ぼされた今は無き延沢の銀山族の末裔 狐母禮(こもれい)、髪は銀髪で、女は簪に銀毒を仕込みそれを挿し男のなりで
いくさにも出る
もしもの時には凌辱を恥じ、その銀毒で自害するのを習いとしていた
父は頭(かしら)として皆からとと様と呼ばれ、勇敢に戦う男だったが多くの子供達を助けるため大和との対戦で死んだ
母はかか様と呼ばれ、息子の阿弖流為と共に、どの
部族にも戦いの仕方を教え、巨大軍団にして大和に対抗した
しかし阿弖流為は各部族同士が戦わなくなり、
日高見(ひたかみ)に少し平和が戻った時 大和ともこれが出来ないかと考えて竹族のリヨウに大和の事を学んでいた
竹族のリヨウは博士と呼ばれ、大和の書物も理解し、蝦夷の古い教えも全て学んでいた、そして大和以外の各地の文献もことごとく学んでいた
またいくさの戦法は風を読み星を調べ阿弖流為に助言する、蝦夷に無くてはならない知恵と導きの部族の長で、阿弖流為の夢をもっとも理解し、叶えたいと願う男なのだ
やがて、このリヨウに『大きな使命』がやって来る時がおとずれる事を今は誰も知らない
つづく
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