第4話 ハーブ探しの小冒険

翌朝、まだ朝露が葉に光る時間に、私は森へ出かけた。今日はどんなハーブに出会えるだろうかと、胸がわくわくする。手には小さな籠を持ち、香りの道しるべを頼りに足を進める。ラベンダーやミントの葉先に朝露がきらめき、手に触れるとひんやりと心地よい。


森の奥へ進むにつれて、周囲の空気はさらに瑞々しく、花や草の香りが混ざり合って濃厚になっていく。ペパーミントを踏むと、爽やかな香りがふわっと足元から立ち上る。思わず深呼吸すると、体中に清涼感が広がり、心まで軽くなる。


「今日も森は元気だな……」私は小さく笑いながら、葉の形や色を確認してハーブを摘む。ローズマリーの濃い緑色の針葉を手に取り、指で軽く擦ると、鼻をくすぐる香りが頭をすっきりと目覚めさせる。香りの力で、迷いや不安もふっと消えていく感覚だ。


小さな小道を曲がった先で、森の香りが少し変わった。花の甘い香りに混ざって、土の匂いや木の香りが濃くなる。ふと前を見ると、小さな魔物がこちらをじっと見ていた。驚きのあまり息を飲むと、魔物はひるまず、でも攻撃もせず、ただ森の中でじっとこちらを見つめている。


「落ち着いて……香りで距離を測ろう」

そう思い、手元のハーブをそっと擦る。ローズマリーとミントの香りがふんわり立ち、魔物は少し後ずさる。香りのバリアのように、互いに安全な距離を保てた。深く息をつき、籠にハーブを丁寧に並べる。森の中で、香りが私の友だちになったような気がした。


ふと空を見上げると、朝の光が木々の間を抜け、葉をキラキラと照らしている。森の香りと光に包まれて、私はただ歩き、摘み、香りを楽しむ。都会では感じられなかった、時間のゆるやかさと森の生命力に、心から癒される瞬間だった。


籠がいっぱいになったころ、森の小道の向こうに村の屋根が見えた。摘んできたハーブの香りを胸に抱え、村へ戻る足取りは軽く、今日もまた新しい香りと出会える期待で胸がふくらむ。森は私の小さな冒険場であり、香りの教室でもあった。


本日のハーブ

ハーブ/香り:ペパーミント、ローズマリー、タイム

効果:疲労回復・集中力UP(森での行動に役立つ)

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