第3話 計画のはじまりとおわり

私がここに記したことのすべては、今や彼の記憶となり、彼の人格を形作っていることだろう。私と彼は同一の経験と人格を共有している。しかし、ここに記すこの瞬間、この「書く」という行為は、私だけの経験だ。彼は、この行為を知らない。


彼と同一の時間を過ごした次の日から、私はこの手記を書き始めた。だから、今の私と今の彼は、別人なのだ。同じ人間であるとしたら、それは昨日のある一瞬、我々が同一であったに過ぎない。肉体の年齢を別にすれば、精神は同一だった。


我々の計画は、終わった。私は今、ただ死を待つだけの、薄汚れた老人だ。


このような運命の中で生きてきたことを思うと、ある種の神秘的な気分に浸る。それは科学的な神秘ではなく、精神的な神秘だ。科学者である私が、今は真に哲学的な人間になっている。それが私の本望であると信じている。


彼は私のクローンである。


だからといって、彼は私であったのだろうか?


そして、私のこの私のクローンを製造する計画は神への冒涜であったのだろうか?


私の計画は、私の中で起こっていた、全く私的な夢想だったのだろうか?



現実にこのようなことが起こっていたと、誰が真実だと言えるだろうか。

私の身に起こった現実の断片たちは、確実に起こったと証明できるのは私だけだ。私が「起こったのだ」と口にすれば、それは起こったことになる。私が「そう信じた」と言えば、それは真実なのだ。


信じるということの中に、私はいる。この信じているということの中に、神がいる。神は我々の世界の根底を支えている。しかし、残念なことに、世界には神は現れてはいけない。ドストエフスキーが言いたかったことは、神は世界の中では沈黙しなければならないということだ。


私の「私」は、彼の「私」へと受け継がれた。


私の人生は、彼の人生の中に、無名の、しかし確固たる力として存在する。私が信じた世界は、彼が生きる世界となった。そして、私は、この手記の終わりとともに、この物語、私のエクリチュールから静かに身を引く。

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