第6話 INT上昇チートなら迷わず使っていた
「なぁ考え直さないかい?世間はクロームが考えているほど優しくは無いんだ」
「捨てないで……私達を捨てないでよおぉ……遠くに行かないでよぉ」
また面倒な茶番が始まっていた。遠くにて…お隣なんだけど。
最初におっとりしたママ!なんて地の文で紹介したのにキャラが崩壊してきてるよ。
外出のお伺いを立てたのは三日前の話だ。
その時の僕の対応が良く無かったのかもしれない。
「僕は……大切な家族を見捨てたりしないっ!この家が僕の家なんだっ!!また家族三人で肩を寄せ合い生きて行こう!!」
ついノリで両親に合わせてしまったのだ。二人が流す滂沱の涙を見て、小芝居の気持ち良さを感じてしまった。まぁ小芝居に味を占めたのは両親だった訳だけど。
「おっ邪魔しま…うおっ!?今日もやってますわねぇ……」
「……こんちわ」
女の子らしからぬ声を出しながらスカーレットちゃんはやって来た。家族のこんな姿を見せたくはないけど、僕の足に縋り付く両親を見られたくは無いけど。
スカーレットちゃんはまたかと言った顔をしながら僕の足から両親を引き剥がしてくれた。
「お義父さまにお義母さまもクローム様離れしてくださいな!あまり束縛しすぎてもクローム様のお心がスルスルっと離れちまいますわよ?」
図星を突かれて痛いのだろう、スカーレットちゃんから目を逸らしながら「クロームが僕らを見捨てる訳が無い」だの「あなたにお義母さま呼びを許した覚えはないわ」と小声で反論している。
僕の方は順調に親離れ出来そうだよ…
「とりあえず僕の部屋に行こう。相談したい事があるんだ。」
「うぉっ!?いきなり二人きりの部屋で相談ですの!私達まだ四歳ですのよ?照れちまいますわよ!やんやん」
相変わらず口調が安定しないスカーレットちゃんを部屋に連れて行く。
「相談ていうのは私達の具体的な将来図のことですわよね?面と向かって言われると照れちまいますわ」
両頬を両手で押さえながら両耳まで赤くした良スカーレットちゃんが言った。
「え?いや、僕の事なんだけど。ファイン様からチートを幾つか押し付けられたせいで僕は今後の楽しみを奪われたと考えている。成長の喜びを!」
「あー!そっちの話でしたの!?まぁ魔力は無限ですものねぇ」
女神様関連の話が出来るのがスカーレットちゃんの良い所。話が早い。
「そうなんだ!でも、抜け道が何かあるはずと思ってね、脱法成長とか無いかな?」
「脱法…?通常の身体強化なら基礎の能力を上げるほど能力がガンガン上がっていきますが…」
「そうなの!?」
いきなり成長要素が見つかっ…
「ただその、クローム様の身体強化は超が付いてましたわ?」
「超が付いてたね…えっ!超が付いてるとダメなの?成長要素ダメなの?」
元々武器創造だけでこの世界を駆け抜けて行くと考えていたけど、自身のレベリング有っての話だ。
「恐らく超身体強化は常時発動、MAXタイプのやべースキルだったはずですわ!クローム様が意識して押さえていなかったら今頃ここは空き地になっていたはずですわ!」
スカーレットちゃんの中では、空き地になっても僕が敷地内から出ないルールを律儀に守っている設定なのか。
「そうだ、実戦の経験は?戦闘経験は蓄積して行くんじゃ?」
「クローム様なら相手の初動を許さない戦闘が可能と思いますわ。例えば居合の使い手に会っても刀を抜く瞬間にその手を押さえる事も可能かと。シュッとしてパッ!ですわね」
何その瞬間移動みたいなのは…動くだけでソニックブームが起きちゃうよ…
「移動だけで「風魔法で大気や音を制御するんですの」
食い気味だなぁ。
「魔法は(あまり)使わないし、人間相手に戦わない。他に成長の余地が有る物を考えて欲しいんだ」
「クローム様は知識関連のチートはいただきましたの?」
「ぇっ!?貰ってたら自己解決してると思う…」
思わず声が裏返ってしまった。そうか、鍛えるべきは頭脳でしたか…
「クローム様の前世知識もチートと思いますが、この世界ならではの知識を覚える必要も有ると思いますわ。ガリガリッとお勉強ですのよ!」
ごめんスカーレットちゃん。僕の知識は基本うろ覚えなんだ。
携帯、タブレット、ネット環境のインフラ。これらを生み出すチートが欲しい…
「あ、ありがとうスカーレットちゃん。当面は勉強にも力を入れるよ」
「クローム様の将来は商売をウチから継ぐか冒険者としてドカッと稼ぐかの二択ですわ?勿論、どちらでも私は付いていきますのよ?」
そうか、僕の将来は二択だったのか。知らない間に他人の敷いたレールに乗せられていたが、そうか…。二択か……。
スカーレットちゃんは僕との甘い将来をひとしきり話すと満足そうに帰っていった。
まだ家から一歩も出る事無く将来は二択。しかも勉強だけが成長の道か。
ふと思い出した、学校?学園?だ!新たな出会いや自慢の武器を見せびらかすチャンスはいずれ訪れるんだ。武器科や冒険者科なんてものもあるかもしれない。
そうだよ、力を押さえた闘いや、人を極力傷つけない訓練用の武器も必要だ。
刃を潰した蛇腹剣や角を取ったペンデュラムを作ろう!木製で一旦作ろうか?
武器は良い、心が落ち着く。
さぁ忙しくなるぞ!!
二分。
訓練用の蛇腹剣とペンデュラムを出し…製作するのに掛かった時間だ。
九割が仕様を考えた時間。
上手く刃は潰され、角は丸味を帯びていた。
…やるか!
アイテムクリエイトでサンドペーパーを出し、ペンデュラムに掛けて行く。
武器に関わるものならチートを使うのもやぶさかでは無い。
ペーパー掛けは思わぬ暇つぶしになった。ペンデュラムも蛇腹剣も表面はスベスベだ。
空間収納にスベスベの武器を仕舞おうとしてふと思い出した。
「あれ?収納袋貰った気がする。お?有った有った!」
最初に望んだアイテム。無限収納袋だ!空間収納と言う便利魔法があるせいですっかり忘れてました。
「袋だから大きい物が入れにくそうなんだよね」
袋の口紐を緩め、何の気無しに手を入れる。
「うわっ!?なんか入ってる?」
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