テーマ:「パラシュート」

 イカロスがパラシュートを持っていたら、墜落せずに済んだだろうか。

 空が恋しい。

 時折、どうしようもなく空を飛びたくなる時がある。そういう時はセスナに乗る。操縦者ではなく、スカイダイビングの参加者として。

 扉が開く。カウントダウンが始まる。

 この瞬間の度、自分の中に帰れるという想いがいつも浮かぶ。

 ゼロと共にそらへ飛び出す。全身で空を享受するあの宙へ。

 風が二の腕を叩く感触が懐かしくて堪らない。楽しい、うれしい、ホッとする。

 自分はきっと前世、鳥だったのだろう。空を翔ける事が得意な。それがどうして今、人なんかになったのかは分からない。もしかしたら、かのイカロスの様に、高く高く舞い過ぎて堕ちたのかもしれない。でも、

 パラシュートの紐を引く。空に戻される感覚。

 こんな風にパラシュートがあったなら、きっとそれでもまた飛べただろう。

 地に足が着く。興奮と郷愁が去来する。あぁ、もう一回。

 神様に堕とされたって、大丈夫だから。

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