テーマ:「あかり」

 肌寒い季節になった。

 家々の灯りが煌々と空を照らす頃に支度をして、家の鍵を閉める。

 歩きつふと振り返れば当然真っ暗な我が家だが、お隣さんはカーテンの隙間から光が漏れている。

 それがちょっとイイなと思えた。

 夕飯の匂い、洗剤の香り、漏れるバラエティに富んだ音。オレンジと黄色と白と、少し奇抜な色の混ざる中を抜ければ暗く沈んだ街灯だけの道。擦れ違う人達は皆自分と逆方向。あぁ、イイな、イイな。羨ましいな。ここも十分明るいけれど、自分の来た道へ行く人達は、もっと明るくて温かい場所へ向かうのだ。

 それがとても羨ましい。

 自分はいつからこんな日々なのだったっけ。思い出す為に見上げた空には星が点々と光っていた。街中では灯りに照らされて見えなくなる程度の淡いそれ。

 なんか、もう今日は帰りたいな。

 灯りの点いていない今の家じゃなくて、結局思い出せなかった、ずっと昔の温かい橙の灯りが灯る所に。

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