テーマ:「公衆電話」
一分十円。学校の緑の公衆電話は事務の人に声を掛ければいつでも使えた。だから休み時間の度に列ができた。忘れ物を持ってきてという声、お迎えを頼む声、外の誰かを呼ぶ声も。それはもう公衆電話じゃなくともと思うものもあったが、何かと使われていたその子はスマホが普及して尚使われていた。ある種の特別感。少なくとも自分達世代は、ありふれたスマホよりあのボタンの感触、お釣りのレバーの軋み、コール音の奥行きにいつもワクワクしていたのだ。
そしてその子は今もそこに在る。
自分が教員になり、母校へ赴任した時に知った。今も生徒達がパタパタと走ってきては、慌ただしくチャリン、ガチャガチャと操作している。暫しの沈黙、そこから捲し立てられる裏返った声も懐かしい。自分もかつてはあぁだったと思い出しながら、ふと鞄が気になった。いつもより軽い。中を覗けば……
取り敢えず、三十円あれば足りるかな。
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