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その三文字が持つ、
しかし、彼女の心は恐怖に支配されてはいなかった。
むしろ、謎が深まれば深まるほど、その中心にある真実を知りたいという、
「水上さん」
志乃は、閲覧室の受付窓口に目を向けながら、静かに言った。
「
その指摘に、水上ははっとした。
そうだ、敵の足跡を追うことが、敵の目的を知るための最も確実な近道だ。
「…素晴らしい
三人は受付窓口へと向かった。
そこに座っていたのは、人の良さそうな、しかし少し退屈そうな
水上が、大学の身分証を提示し、穏やかな口調で尋ねる。
「実は、我々はある歴史研究の過程で、
館員は、面倒くさそうに首を振った。
「さあ…東京からのお客さんなんざ、毎日ぎょうさん来られますでな。いちいち覚えとらんよ」
しかし、水上が言葉を続けると、彼の表情がわずかに変わった。
「彼らは、この地方の、特に
その言葉に、館員は思い出したように、ぽんと手を打った。
「ああ! あのやかましい連中のことかいな! いやはや、
陸軍。
その言葉が、再び三人の間に重く響いた。
「して、彼らは、どのような資料を?」水上の声が、鋭くなる。
「そりゃあ、もう色々さ。あんたらが見ていたような、明治時代の古い新聞や災害記録は
神社の場所が書き込まれた、陸軍の測量地図。
玄洋会は、ただ
その先にある、『
「それから…」館員は、何かを思い出すように天井を見上げた。「最後に、わしにこう尋ねていった。『この町で、一番腕の立つ
その情報が、決定打だった。
玄洋会は、すでに山へ入る準備を整えている。
それも、ひと月も前に。
礼を言って資料館を後にした三人の足取りは、これまでにないほど重かった。
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