大食予備軍
趣味嗜好性の高い商品の研究開発部署に所属していながら、図面や仕様書の類と関わらなくなってもう何年が経つのだろう。「管理」という都合の良い名の何でも屋の業務をこなし、いつしかプライドも何処かへ捨て去った。直属の上司から命ぜられれば、壁掛け時計の電池交換作業ですら厭わない。
会社は業績の良さを反映して、毎年多くの新入社員や中途採用者を雇用し続けた。その結果として、気が付けば開発部署のフロアには顔と名前が一致しない若手社員が増殖した。
そんな若者たちは、ごくごくたまに、のっぴきならぬ用事があって俺の席へとやって来る。机上に置かれた名札を見て、奴らは俺に「サカガミさん」と声をかける。そんな俺の本名は坂上敏明(サカウエトシアキ)。面倒くさがり屋の俺は、間違いを訂正することなく若者に返事をする。
そんな若い奴らは俺のことを、ご卒業間近の「ソーキそば大食予備軍」とでも思っているに違いない。だがそれは事実なのだから、残念ながら仕方のないことだ。
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