従順なシュナウザーのような

DEE

ソーキそば

ソーキそば大食

 三十年近く務めた会社が五十五歳での早期退職制度を導入してはや二年が経過した。多くの「先輩」と呼ばれる方々が「卒業」と称して加算された退職金を掴み、早抜けして会社を去っていった。


 若者の誰かが早期退職を「ソーキそば大食」と揶揄し始め、

「あのジジイもそばを食って大食した」

「俺も早くソーキそばを食いてえ」

などと早抜けした連中を羨み、軽口を叩く始末。


 年収の二年分の基準賃金が保証されるこの早期退職制度、得をするのは頭でっかちで使い物にならぬ年配社員を終身雇用せずに済む会社なのか、それとも目の前の大金に目が眩んだ金の亡者どもなのか。


 気が付けば、俺もあと二年でこの早期退職制度の権利が得られる年齢となった。だが聞こえてくるのは、やれ資金が尽きて今年度で制度は終了だとか、いやいやまだまだ組織の膿を出し切っていないから来年度も継続だ、なんて下世話な噂ばかり。


 そんな噂に翻弄されながら、日々いつもの定例業務を粛々とこなす俺は現在、五十三歳。ソーキそば大食予備軍であると自覚している。

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