第9話  回想

俺の苗字は久保田

名前は勘弁してくれ、これでも妻子持ちなんでな。


当時は俺は神大の二回生だった。

学生結婚して妻は妊娠5か月だ。

そろそろ「つわり」が激しくなったので妻の実家に近い公営団地に

引っ越そうかと考えている。


滋賀県の佐和山に近い公営団地だ。

佐和山は知っているか?

石田三成の居城があった所だ。

三成に過ぎたものあり佐和山の城あれだ。


505号室の鍵をもらって開ける。

山が近い。

俺は佐和山城が見えないかと思って押し入れから双眼鏡を引っ張り出して

きたんだ。


眼下の公園を見る。

代り映えしない団地のみみっちい滑り台と砂場

黒い大きな木がある。

葉が落ちて異様な枝ぶりだ。

気味が悪いな…


そうそう山だった。

露出を絞ってフォーカースする。

木々がよく見える。

木を見て森を見ずか…


あっ

猿がいる…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る