花の被さる

@hosaki_m

花の被さる

燃やされた残響だから歌声も煙もずっと遠くまで行く


閉め切ればこの世全ての遠ざかる遮熱カーテン掛けられる夏


書きかけの鉛筆ばかり最後まで使い尽くせる命、などは

 

読み終えて伏せられていく絵手紙の誰にも届かぬ余白のひかり


盲目の獅子という名の夏に咲く花の被さる視界や記憶


後悔にたぶん似ていた苛立ちが夏の底からレモンのように


曇天の屋上庭園しんとしてこの世の王は不在のままだ


だけど貴方の由来もこれからも知ることはなくこんなに静か


凝らすほど渇いてしまう目の代わり泳ぎはじめた暗がりの耳


全身を震わせながら飛行機は忘却のため陸を逃れる

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