しずは両親を家事で亡くし、ぽっかりと胸に穴があいていた。
噴火のたびにお山様に贄になる。しずも選ばれてお山様の贄になるために行くが、そこに巨躯な紀千菊という男が現れて、自分の契約婚のつまになれば、役目を果たしたら死なせてくれると持ちかけられて――
しずちゃんにぽっかり空いた穴がなんなのか、読み進めるうちにわかってきます。それはとても切ない。
そんなしずちゃんを、言葉はちょっとだけ乱暴かもしれないけど、千菊さまは支えてくれます。
まずは腹ごしらえ。お料理も上手です。
千菊さまにも、悲しい過去があって、しずはそれを知ることになっていきます。
ふたりの心の交流がとても優しく描かれています。
読んでいるととても温かな気持ちになれます。
しずちゃんの胸の穴の正体はなんなのか、千菊さまの過去はなんなのか。
二人で交わした口約束の契約婚は果たしてどうなっていくのか。
それはぜひ、皆様の目で確かめてください。
きっと、しっかりと2本の足で立っしずちゃんに出会えると思います。
オススメです…!!
よろしくお願いします…!!
<1・2を読んで>
噴火を繰り返す「お山様」に贄として捧げられる少女・しず。重苦しい宿命と、幼い頃に失った両親の記憶。その「穴」を埋めるために死を選ぶという決意。そこに現れるのは、村人とは異質の大きな男。圧倒的な存在感をまといながらも、彼は生け贄の慣習に疑問を投げかけ、しずに食事を与える。
しずが雑炊を口にしてしまう場面の
「贄や死ぬ覚悟は、空腹と美味しいものの前で粉々に砕け散ってしまった。」
死を望む少女の意思の脆さを露わにし、同時に人間らしい欲求が生の側へと彼女を引き戻す瞬間を鮮やかに映す。悲壮な物語に、生々しいリアリティを与える。
素直で読みやすく、しずの幼さと決意の危うさを同時に伝える調子を保っている。贄という重い題材を扱いながら、会話のやりとりは滑らか。閉塞した村から広い世界へと導く予感。特に、契約=「口約束」の提示は、先行きの不穏さと共に物語を強く牽引。
しずの内面に潜む「死にたい」という衝動と、紀千菊の差し出す「生きろ」という強引さの対照が、今後どう変化していくのか期待したいです。