終末の月曜日 | 三題噺Vol.10

冴月練

終末の月曜日

📘 三題噺のお題(第10弾)

割れたマグカップ

月曜の朝に届いた手紙

黒い犬


🔍解釈ヒント(いつも通り自由に無視してOK)

割れたマグカップ

 → 事故・喧嘩・別れ・隠された記憶など、感情の転換点としての象徴。

月曜の朝に届いた手紙

 → 週の始まりに来た“ズレたタイミング”のメッセージ。内容次第でラブレター、遺書、脅迫状にも。

黒い犬

 → 実際の犬でも、心の影(=鬱の比喩としての“Black Dog”)でも、不気味な目撃情報でも、使い方次第でミステリーから幻想文学まで。


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【本文】

 月曜の朝、スマホを見ると両親からメールが届いていた。開くと予想通りのことが書かれていた。

 こんな状況でもスマホにメールが届くことに、私は驚きと感動を覚えていた。


 缶詰とインスタントコーヒーで朝食にする。

 私はコーヒーが好きで、大きなマグカップでごくごく飲む。お気に入りのマグカップだったのだが、一昨日落として割れてしまった。幸いまだ使える。もう新しいマグカップを買う必要はないし、売ってる店も無いだろう。


 愛犬のルナが私の脚にすり寄ってきた。黒いラブラドールレトリーバー。私はルナの頭を撫でてやる。

 ルナのことを考えると、少し憂鬱になる。


 窓からは海が見える。私のお気に入りの景色だ。

 波の音を聞きながら目を閉じた。身体の感覚に耳を澄ます。昨日よりも熱が上がっているのを感じる。


 世界中で謎のウイルスが猛威を振るっている。

 感染するとだんだん熱が上がり、やがて死に至る。人間にしか感染しない。

「謎」なんて言ってるけど、どこかの国が作ったウイルス兵器だろうと皆言っている。私もそう思う。

 でも、そんなことはもうどうだっていい。私もすでに感染しているのだから。

 両親も熱が上がり始めたそうだ。


 私が動けなくなる前に、ルナを自由にしてあげなくてはと思う。

 ドッグフードは、できるだけ開封しておくつもりだけど、それもいつまでもつかわからない。ルナが自力で生きてくれると良いのだが。


 私が死んだら、私がルナの餌になるかもしれないと考えた。

 それも悪くないと思い、私は海を見ながら微笑んだ。


――――――――――――――――――――――


【感想】

 もしも人間にだけ感染して、死に至らしめるウイルスでパンデミックが起きたら……という、他の小説で書いた世界観の流用です。

 そんな世界になったら、人はどのように最期までの時間を過ごすのか。

 泣き叫ぶ人もいれば、静かに過ごす人もいるのではないかと思います。

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