第30話
第30話 Target26人目:情報戦と心理戦の夜
氷室 崇――闇に潜むダークヒーロー。
先に動き、ターゲットの男を捕らえた。男は深夜の自宅で、スマホ越しに見知らぬ恐怖を感じる間もなく、直接的な手段で命を絶たれた。
アカリは画面を見つめ、指先を震わせた。
“また、先を越された……”
悔しさが胸を締めつける。だが、ターゲットを直接攻撃するわけにはいかない。
そこで、白石由紀に協力を依頼する。
「白石……氷室の行動パターンを解析してほしい。次は、私が先に動けるように」
白石は画面に向かい、膨大なSNS情報、交通データ、IPログ、位置情報を解析する。
氷室は極めて慎重で、痕跡を残さずにターゲットへ接近する。だが、データの微細な揺らぎや過去の行動パターンから、白石は氷室の動きを予測していく。
「次は駅前、22時前後……このターゲットには直線距離で最短ルートを選ぶはず」
白石はアカリにメッセージを送る。アカリはターゲットの行動ログを確認し、最適な方法で社会的抹殺を仕掛ける。
氷室は違和感を覚えた。
“誰かが俺の動きを読んでいる”
街角、狭い路地、駅構内――微かな痕跡、過去の投稿、映像データ。全てが自分の前に立ちふさがる。
氷室は静かに舌打ちをする。
「……アカリの協力者?」
白石は冷静だ。感情を抑え、ただデータと論理で氷室の心理を逆手に取る。
氷室の移動速度、ターゲットへの接近手順、時間差を精密に予測し、アカリに最適なタイミングを知らせる。
アカリは白石の指示通り、ターゲットに先回りする。
氷室があと数分で到達する地点に、すでに罠が仕掛けられ、ターゲットは社会的に葬られていた。
氷室はその光景を目にして、わずかに肩を落とす。
“先を越されたか……”
その眼差しには悔しさと、わずかな尊敬が混じる。
だが彼は立ち止まらない。
闇の中に姿を消し、また別のターゲットを追い続ける。
アカリは画面の前で息を整える。
“似ている……でも、決定的に違う”
「私も殺すことは、あるが・・・」
復讐の感覚――直接殺す氷室と、情報戦と社会的抹殺を駆使する自分。似て非なる道の差が、胸に刺さる。
白石は静かに解析画面を閉じる。
「これで次は確実に先に動ける……氷室を邪魔にせず、ターゲットを落とせる」
夜の都市は今日も無数の炎を生み続ける。
アカリと白石は、それぞれの手で復讐を進める。
だが、黒い影――氷室の存在は、彼女たちの背後で静かに生き続ける。
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■Target数:26人
■NextTarget:選定中
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