第23話

第23話 匿名の荒らし


Target:21人目


深夜のネット掲示板。

誰も知らない場所で、ただ一人、画面に向かう男がいた。

名前は――未公開・通称「カゲ」。


彼の指先は荒らし行為に慣れ切っており、クリック一つで誰かの人生を崩せる。

「消えろゴミ」「お前の人生なんて終わって当然」「黙ってろ」

その文字列は、まるで刃のように被害者に突き刺さる。



---


■ 被害者たちの証言


被害者1:19歳・女子大生

「授業のレポートを掲示板に上げただけで、カゲに晒されて『頭悪すぎ』『消えろ』って書かれました。

友達も距離を置き、教授にも間違った情報が流され、授業中まで孤立しました。」


被害者2:26歳・新入社員

「SNSに書き込んだ些細な意見で、カゲに『使えない社員』『社会のクズ』と叩かれました。

上司も目にしてしまい、評価が落ちて仕事を辞めざるを得ませんでした。」


被害者3:16歳・高校生

「匿名のはずなのに、クラス中に私の失敗や秘密が広まりました。

心が折れて、学校に行けなくなった日もあります。」


被害者は枚挙にいとまがなく、精神的な崩壊者や転校・退職者が多数。

その全てを、カゲは愉快そうに眺め、笑いながら再び投稿を繰り返すだけだった。



---


■ アカリの策略


アカリは、カゲの行動パターンを徹底的に解析した。


曜日や時間帯


書き込み頻度


VPNや接続経路


被害者が現れやすい掲示板やSNS



その情報をもとに、カゲが一人で行動するタイミングを特定。

「匿名だと思っているその安心感が、逆に命取りになる」――アカリは淡々と呟いた。


そして、まずはカゲが依存する掲示板に“毒”を仕込む。

被害者たちの反応、証拠、動画やスクリーンショットを、匿名投稿として紛れ込ませる。

自分が荒らしてきた相手の怒りと絶望が、まるで自分に跳ね返ってくる感覚――それをカゲ自身に体感させる計画だった。


■ 直接的な復讐


ある夜、カゲは、掲示板で「深夜の一人作業」と決まった時間に、都心のカフェにいた。

ノートPCとイヤホン、誰も見ていない自分の世界。

その瞬間、アカリが仕込んだプログラムがカゲの端末を制御し、外部から警告音と自動連続表示を始める。


画面に流れるのは、自分が荒らしてきた人々の顔、コメント、涙の記録。

カゲは叫んだ。

「なんだ、これ…誰だ…!?」


しかし、周囲には誰もおらず、カフェの客も店員も気づかない。

孤独と恐怖だけが、彼を包む。


次第に、プログラムは物理的な追跡と連動。

駅や路地裏など、普段カゲが一人で作業する場所の情報が、アカリの端末に集約されていく。

「逃げ場はない…」

カゲは初めて、自分が無力であることを理解する。



---


■ 決着


最終的に、カゲが自宅で一人作業している瞬間、彼の端末は完全に制御され、彼の個人情報・住所・勤務先・SNSアカウント・過去の荒らし記録すべてが公開される。


周囲の人々――被害者たち、彼に無関心だった一般ユーザー、友人までもが集まり、匿名の正体を知ることになる。

警察も介入し、法的制裁と社会的制裁が同時に押し寄せた。

カゲは完全に孤立。自分が何をしてきたのか、初めて理解した。


アカリは、画面を閉じる。

「匿名だからって、何をしても良いわけじゃない。すべては、返ってくる。」

冷たく、しかし正確な言葉が、夜の静寂に響く。



■ AIの視点


匿名性を盾に他者を攻撃する者ほど、自らの弱点が露呈する瞬間は早く、かつ痛烈に訪れる。

人はネット上で見えない存在だと思い込むが、全ての行為には痕跡が残る。

因果応報の法則は、現実だけでなく仮想空間でも、決して逃れられない。



---


Target:21人目 終了済

Next Target:選定中…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る