到着そして……………

「そろそろカズィだよ。」

「わ、やっとか………………」

 ダイチの言葉にため息をついて安堵の表情を浮かべた。

「ガランティーバッジは持ってる?」

「もちろん。」

 ガランティーバッジ、この世界における身分証であり、限られた人物によってその持ち主の情報を刻むための媒体でもある。

 基本的に生まれや名前、犯罪歴が刻み込まれる。

「今回は確かこれだったかな。」

「!?ば、バッジが何個も………!?」

「ふふ、内緒だよ?僕はこれでも刻む者の魔法も使えるんだ。」

 人差し指を口につけて、ウィンクをする。

「え、じゃあダイチって名前は………」

「もちろん、前世の名前さ。今世の名前は捨ててはないけど、使うつもりはないかな。」

「ヘ,ヘェー。」

 想像以上に規格外なダイチを見て、ショウの開いた口は塞がることがなかった。




「次っ!」

「ダイチ・ナリトウです。」

「うむ、問題なし!次っ!」

「しょ、ショウ・ディギライト、です!」

「うむ、問題なし!両名通ってよしッ!」









「無事に入れたね…………」

「ショウは僕のバッジが見破られないか心配だった?」

「そ、そそそんなことは…………アルケド………」

「そんなへまはしないよ。さ、冒険者に登録したら早速僕の拠点に行こうか。」

「うん!」














「ここが冒険者ギルドだよ。」

「ワァオッキィ………」

「じゃ、入っちゃお。」

「あ、まって!」

「ん?」

「ちょっと心の準備をさせて。」

「分かった。」

 ショウはそう言うと、右手で顔を覆い、天を仰いだ。


「よし、行くぞ……ダイチ。」

「おぉ!ガチモードでいくんだね!?なら僕もいつも通り雰囲気出して行っちゃお。」















 時刻は昼を過ぎてなお盛況な冒険者ギルドに、圧倒的なオーラを放つ二人組がやって来た。

 それに気付いた冒険者達は、皆一様に会話を止め、その二人を見つめていた。


 そんな二人組は列の最後尾に並ぶと、そんな周りのことなど何処吹く風とばかりに一瞥すらしなかった。



「御次の方どうぞー!」

 二人組の番になり、呼ばれた受け付けへと向かう。

「御用件は………」

 そう聞こうとした受付嬢は、その後の言葉が出てこなかった。

 対面したこともない程の圧に加え、冒険者達の視線、何よりこの受付嬢の勤続日数が一月だったことが良くなかった。

 緊張と恐怖で動けなくなった受付嬢は、顔を青くして口をパクパクと動かすことが精一杯だった。


 それと同じくして、ショウの心境も似たようなものだった。

 緊張と不安で口が動かせず、ダイチに助けてと視線を送っていた。

 それを察したダイチは、威厳ある口調で受付嬢に話し掛けた。

 

「どうした?」

「はいぃぃ!?すみませんんんんん!!!」

 ダイチに声をかけられた受付嬢は我に返ったように大声を上げた。

「……………まぁいい。こいつの冒険者ギルドへの登録を。」

「は!?えっと、あのー……初心者の方ですか……?」

 驚きで目を見開いた受付嬢は、ショウを凝視した。

「そうだ、冒険者は、な。」

「ヒッ……す、すぐにでも受領致しますぅ!!!」

 ダイチの含みのある言葉に受付嬢は涙目で奥に必要な書類を取りに走り去っていった。


 「ごめんダイチ。緊張しちゃって。」

 「気にしないでショウ。僕も最初はそうだった。」

 「そうなの?なんか意外。」


 二人が小声で話し合っていると、受付嬢が速足で帰ってきた。

「こ、こちらに名前と出身地とサインを!」

「了解した。」

 初めてちゃんと声を出したショウを見て、受付嬢は少し落ち着いた。ちゃんと話せる人なのだと。



「これで。」

「は、はいぃ!…………………確認しました!あなたも正式なギルド員ですぅ!」

 手際よく書類を受理して機械に通した受付嬢は、ギルド員を証明するカードを45度のお辞儀と共にショウに渡した。

「む、そうか。此度はこれにて失礼する。騒がせたな。」

 ショウは満足そうに頷いた後、そのままダイチと共にギルドを後にした。




 その後のギルドは"あの"ダイチが連れていた男は誰なのかと話すものや、気に食わないと舌打ちをする者、そして新人受付嬢である彼女を讃える者と三者三様となっていた。

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相手を同郷だと思い込んでいる転生人VS相手をガチだと思い込んでる現地中二病 麝香連理 @49894989

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