1000年に一人の逸材だけど、依頼が多すぎて人生ハードモード
紡識かなめ
第1話 1000年に一人の逸材、冒険者デビュー!
アウリス王国の首都、王都ルーヴェン。
魔導照明で夜も煌めく大通りを歩く青年に、人々の視線が集まっていた。
「見ろ、あれが……」
「剣聖ライオネルの息子、アレンだ」
「母は大魔導士セリーヌだろ? あの両親の子供だ……千年に一人の逸材って、本当なんだな」
彼の名はアレン=ライオネル、十八歳。
剣聖と大魔導士という英雄譚の主役のような両親に育てられ、幼いころから剣も魔法も叩き込まれた。
十五歳の時、王立学院で行われた模擬試合に出場し、なんと上位Sランク冒険者に互角で渡り合ってしまったことから、一躍「逸材」として王国中に知られる存在となった。
もっとも、両親は厳しくも温かな人々だ。
「アレン、剣も魔法も、ここまで鍛え上げれば立派だ。だが──」と父は言った。
「本物の冒険者は、実戦と仲間に育てられるもの。気を抜くなよ」
母も微笑みながら「困ったら戻っておいで。でも、その前に自分で考えなさい。あなたならきっとできるから」と背中を押してくれた。
期待と不安を胸に抱き、アレンは今日、冒険者ギルドへ足を踏み入れる。
◇
広間に足を踏み入れた瞬間、ざわりと空気が揺れた。
冒険者たちの視線が一斉に集まる。羨望、嫉妬、好奇心。
どれもアレンには慣れたものだったが、心臓の鼓動が速まるのを抑えられない。
「冒険者登録をお願いします」
受付嬢のエマ=クローディアが、にこやかに迎えた。
「お待ちしていました、アレン様。国中が注目する日ですね」
登録は滞りなく済み、金色の縁取りが施された冒険者証が手渡された。
アレンは深く息を吸い込み、宣言する。
「今日から僕は冒険者だ。世界を平和に導いてみせる」
だが、エマは微笑んだまま、少し困ったように首を傾げた。
「……その前に、注意点がございます」
「え?」
「アレン様といえど、冒険者規約は同じです。単独行動は禁止。最低でも一人は仲間を連れて依頼を受けてください」
「……仲間、か」
思わず呟く。
確かに、剣技も魔法もSランク上位陣に並ぶ実力を得た。
けれど──模擬試合はあくまで模擬試合。本物の実戦経験はない。
父が「仲間に育てられろ」と言った意味が、今さらながら胸に響いた。
エマが依頼書を差し出す。
【Fランク依頼:近郊の丘での薬草採取】
「初依頼はこちらになります。ただし、誰か仲間を見つけてから挑んでください」
──英雄譚の第一歩は、薬草採取と仲間探しから始まる。
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