第7話 覚悟と事実

 そもそも、風俗店というのは、その市民権を得るということのために、法律的に、結構難しいことになっている。

 風俗店を管理している法律というのは、ご存じのように、

「風俗営業法」

 というものが、

「基本法律」

 ということになっている。

 ここでは、いろいろな、

「風俗のジャンル」

 それぞれで、

「法律が決まっている」

 ということになっている。

 ジャンルというか、ランクといってもいいが、

「遊技場から、性風俗業界まで」

 というところで、幅が広いといってもいいだろう。

 まずは、

「パチンコを含めた、遊戯関係」

 つまりは、ゲームセンターなどが、そうで、次には、

「飲み屋関係」

 などがそうだ。

 女の子が接客に関わるということで、分けて考えられるのが、

「キャバクラ関係」

 のような、

「男性と同席をするようなサービス」

 であったり、

「あくまでも、カウンター越し」

 というような、スナック関係などもある。

 そして、完全な性風俗としての、

「ソープ、ヘルス」

 などのような、

「箱型」

 の風俗と、

「デリヘル、ホテトル」

 などと言われる、

「派遣型」

 の商売である。

 この二つには大きな違いがあるが、一番はっきりしている法律的な違いとすれば、

「営業時間」

 ということであろう。

「箱型」

 というのは、深夜帯としての、午前0時から6時までは営業禁止ということなのだが、派遣型に関しては、そういうくくりはないということだ。

 そして、これらを全般的に規制した法律が、

「風俗営業法」

 というものであるが、これはあくまでも、

「規制する法律」

 ということであり、

「取り締まる法律」

 ということではない。

「では、取り締まる法律というのは、何なのか?」

 というのは、自治体が定める、

「都道府県条例」

 というものなのだ。

 つまりは、

「都道府県によって、その取り締まりの規定が違う」

 ということだ。

 要するに、

「風営法で決まっている内容を破らない範囲で、各都道府県にて、風俗営業を取り締まる」

 ということになるのだ。

 だから、

「都道府県ごとに、営業時間も違っていて、店は条例に定められた範囲内で営業時間などを決める」

 ということになるのだ。

 それが、

「風俗営業」

 というものの基本であることから、

「営業できる範囲は決まっている」

 ということになるのだ。 

 しかも、風営法には、結構厳しいところもあり、そのほとんどは、

「ソープランド」

 というものに集中しているといわれる。

 たとえば、

「ソープランド」

 というのは、基本的には、

「お風呂屋さん」

 ということで、

「スチーム装置を設置していないと、営業できない」

 というものであったり、

「新規参入ができない」

 ということで、

「新しく、ソープ業種として、乗り出してくることはできない」

 ということになる。

 だから、店が立ち退いた後に、新しく入る店舗は、

「どこかのチェーン店の支店」

 ということであったり、

「近くの店の、別館」

 ということでないと営業ができないということである。

 さらには、

「新規参入とみられることから、もし、別の店舗が入って、店のコンセプトに合わせる」

 というようなことから、

「大規模に中身を改修する」

 ということはできないのだ。

「マイナーチェンジしかできない」

 ということで、店を開業するにも、いろいろな問題があるということになるのだ。

 そもそも、今のソープは昔と違い、結構増えた時期があった。

 もちろん、

「チェーン店、姉妹店」

 などということでの

「グループ会社」

 であるが、同じようなコンセプトの店ではなく、それぞれに、

「個性を持ったコンセプト」

 ということでの店舗を経営することになる。

「人妻店」

 であったり、

「コスプレ」

 を中心とした店ということで、

「学生服専門」

「ナース専門」

「OL専門」

 というようなコンセプトである。

 当然、それぞれに、客も好みがあるわけで、コンセプトを分けておくことで、その店の常連になってくれるということになるので、その方が店としてもありがたいということになるであろう。

 だからといって、それらを簡単に認めると、店がどんどん増えていき、

「オリンピック招致」

 であったり、

「万博開催」

 などで、

「風俗街撲滅」

 ということをやろうとしたとき、

「店が増えすぎると、なかなか規制も難しい」

 ということになるだろう。

 それを考えると、

「風営法改正」

 あるいは、

「都道府県条例改正」

 というのも、やむを得ないということになるのであろう。

 ただ、風俗店というものを、

「必要悪だ」

 と考えているとすると、

「大っぴらにつぶす」

 ということはできないだろう。

「性犯罪の抑制」

 という目的が大きいだろう。

 それに最近は昔と違って、

「性風俗業界」

 というのも健全になってきているといってもいいだろう。

 中には、

「ブラックなところもあるのだろうが、女の子が、自由に店舗をいろいろ移籍するということができる」

 ということで、そこまで昔のような、

「借金のかたに売られた」

 ということも少なくなっているだろう。

 ただ、ホストクラブとの問題がないわけではなく、それでも、まだ、昔の、

「麻薬との関係」

 というよりはましだろう。

 きつい言い方をすれば、

「ホストに狂う」

 というのも、ある意味、

「自業自得」

 という面がないわけではない。

 特に今の時代は、

「SNS」

 などというのが発展し、

「客と女の子が話をして予約を取る」

 という、

「女の子の営業」

 ということから、集客に結び付く時代になっているのである。

 昔であれば、

「勝手に、女の子と交渉し、二人で会うようなことになれば、店に来なくなる」

 ということで、その件に関しては、

「今も昔も禁止」

 ということであるが、

「女の子の営業活動」

 ということでの、

「SNS」

 というのは不可欠ということである。

 つまり、

「女の子が営業を行う場合のSNSの利用」

 であったり、

「女の子を辞めさせないようにするための、イロカン」

 というものであったり、実際に、

「裏表がある」

 ということで、

「いい面もあるが、その裏には、闇がある」

 ということになるのかも知れない。

 SNSの集客に関しては、

「ほぼ、悪いというところは見当たらないだろう」

 と言われていたが、実際には、

「これも裏がある」

 ということで、それは、

「他の犯罪に絡む」

 というか、

「隠れ蓑にしよう」

 とする組織があったりして、

「女の子や客が気づかずに利用されている」

 ということがあったりするのだ。

 しかし、このあたりのことは、

「最近、警察でも目をつけている」

 ということであった。

 元々、こういうことは、

「生活安全課」

 などが、その管轄ということになるのだろうが、

「最近では、それにともなっての殺人」

 ということも、少し出てきているというウワサもあることから、

「捜査一課」

 であったり、

「公安」

 までもが、乗り出しているといわれている。

 もちろん、捜査内容は、

「トップシークレット」

 ということで、

「誰もが、その秘密を知ることはない」

 と言われているが、それも、

「敵を欺くにはまず味方から」

 ということわざに準拠しているといってもいいかも知れない。

 実際に、

「公安でも、生活安全課でも、内偵というものが行われている」

 ということだったのだ。

 警察をいう組織は、一見、表から見ただけでは分からない。

 そこには、

「裏もあれば表もある」

 ということで、そもそも、取り締まらなければいけない相手が、そういう何重にも連なる組織ということで、

「警察も、それに立ち向かうだけの組織を持たなければいけない」

 ということになるだろう。

 昔の警察のように、

「国家権力を振りかざす」

 ということができないだけに、

「表向きには正攻法で」

 ということになるであろう。

 彼女は、

「自分の考えていることが、時間が経つにつれて、真実になってくる」

 というような感覚になるというようだった。

 自分で、そのことを怖いと思っていて、実際に、その通りになっている。

 それを考えると、

「普通の人だったら、耐えられないかも知れない」

 と考えることから、彼女は、そこまでは思わなかったので、それでも何とか自分を守ろうとして、

「自分の殻に閉じこもる」

 という発想から、

「記憶喪失になったのではないか?」

 と考えると、それは、

「精神的な理屈」

 と、

「時系列で感じる思い」

 というものが交錯して。彼女の理屈が分かる気がする。

 問題は、それを、

「覚悟をもって信じよう」

 と考えた坂上が、どう解釈し、

「覚悟の持ち方を、いかに考えるか?」

 ということが問題になるのだ。

 もちろん、坂上は、彼女と知り合ったのは、記憶を失ってからということなので、それ以前は、完全に想像でしかない。

 しかし、

「誰だって、知り合う前のその人を知ってはいないだろう」

 それを、もし本人に記憶があって、

「自分は、こういう人間だ」

 ということを言ったとして、果たしてどこまで信じられるかということである。

「人間、人を信じるとして、どんなに信じたとしても、100%というのは、まずありえない」

 それは、誰であっても同じことで、逆に、

「100%というのであれば、それは嘘であり、信憑性がない」

 というばかりか、

「自分に対しても、信じていない」

 ということになるだろう。

 それを考えると、

「何も信じられなくなりそうで怖い」

 と、坂上は考えるのだった。

 そもそも、坂上は、

「警察に連れていくのは嫌だ」

 と思っているのだが、それが、

「警察なんか信じられない」

 という感情からきているというのだろうか?

 確かに、坂上のまわりには、

「警察なんて信じられない」

 といっている人がたくさんいて、

「彼らだって、俺と同じ立場になったら、警察になんか行くはずはない」

 と思うことだろう。

「警察に行ったって、一応彼女を受け入れて、どうせ施設か病院に入れるということを手続き的に行うだけで、事件として取り上げることはないに違いない」

 という。

「警察なんて、何かが起こらないと、何もしないさ」

 というのも分かり切ってはいる。

 しかし、坂上が彼女を警察に連れていこうとしないのは、

「警察が信じられない」

 という思いとは、少し違うような気がするからだ。

 もし、

「警察を信じされない」

 ということであれば、

「精神的な立場はこっちが上ということで、警察というものを、本当に毛嫌いしている」

 といえるだろう。

 しかし、坂上はどちらかというと、

「警察というものが、怖い」

 と思っているのだった。


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