10話
一時間後……俺は話が止まったそのコンマ0.1秒の瞬間、隙をついて問いかける。
「ところで、さっきおじいちゃんが持ってきて足元に置いてある箱に入ってるのが例のアレかな?」
「………ええ、そうでございます。流石は旦那様!お察しが宜しいっ…、すぅーー、はぁ……大輝も……だったら…………」
手負いの猛獣のようなおじいちゃんとは、なるべく目を合わせないようにしつつ渡してくれた箱を開けてみることに。
開ける時のワクワク感を共有する為に、折角だから全員で開けよう?…それじゃあ行くよ。
せーのがさんし!
…開ける時も大輝は今頃どうしているのかと、怖い目で呟いていておじいちゃんを怒らせてはいけないなと強く感じたよ。
キヨさんとおじいちゃんは、開けたら見やすいようにすぐ後ろへ下がったから俺とフォレスター君で梱包されている服を取り出そうか。
離れたところでキヨさんがおじいちゃんの対応してくれてることに、喜びは覚えてないよ?
まさか、お世話になってる綾織 幸雄様にビビってるなんてことは無いからね?
少し気が逸れてしまっていると、服を持ったまま固まる俺にフォレスター君が頭突き。
『ンンッゥ、!!』
「っごめんね〜焦らしてるわけじゃないから、頭突きは止めてね。それ意外と痛いんだよ?いい歳して泣いちゃうよ」
気が早って仕方がない様子のフォレスター君を宥めながら、一緒に服が汚れたり型崩れしないようにしてある厳重過ぎる特殊な梱包を剥いでいった。
すると、桜の花びらを散りばめたような美しさがある着物を模したモンスター用の服が!
箱を開ける為に、床へ下ろしたフォレスター君の背中に当てて軽くサイズチェックをするとピッタリだね。
「もう待ちきれないだろうし、試着室で着替えてみて大丈夫そうならそのまま着て持ち帰ろうかな?」
「蓮様、それでしたらフォレスター様と取り出してる間に支払い等諸々の作業を終わらせたので、安心して着させてあげて下さい」
「キヨさんの手際が良過ぎるから俺はストレスフリーの人生だね、おじいちゃんも試着室の許可くれるかな」
「勿論大丈夫ですよ、私はキヨ様と募る話もあります。どうぞ、旦那様とフォレスター様はゆっくり服の確認をしていて下さい」
2人の言葉に甘えることにして良かったね〜と、声をかけながら慣れ親しんだ店内を歩き少し奥にある試着室に入る。
フォレスター君の苔も霧吹きと手で丁寧に整備したツヤツヤな状態なのを確認して、絡まった毛が無いかも触診したら着物タイムだ。
何だか意味深な雰囲気を出していたおじいちゃんの念がここまで飛んでくるようだけど、気にしないことにしよう。
世の中、触れてはいけない領域があるんだ。
そして、今はキヨさんが生贄になってくれてるから俺達は一旦おじいちゃんのヒロ君語りから逃げておこう…
試着室にフォレスター君を寝かせて、キヨさんが持ってくれていた特別な着物を受け取りデザインを再度確認!執拗いようだけど、ちゃんとしておかないと後々困るからね。
ナマケモノ似体型に合わせてあるゆったりした大きさと緑の苔をイメージした柄が入ってる親しみやすさ、良し。
袖は短めで動きやすく帯は簡単なマジックテープ式でフォレスター君の手も届く位置、これも良し。
おじいちゃんの仕事だから心配はしてないけど問題無いのを一応確認したら、丁寧に袖を通させて帯も試しに締めさせてみた。
すると、フォレスター君は鏡を覗き込んで満足げにポーズを取っているね。
やっぱり子供と同じで自分でやった実感と達成感があると、嬉しさもかなり変わってくるみたいだね。
ご機嫌のフォレスター君は特性着物を着たら、ゆるキャラっぽさが倍増して可愛いったらありゃしないから沢山褒めとかないと。
「着物姿はまるで森の妖精さんだね、実体化してる間はこれでオシャレを楽しんで!注文する時に頼んでおいたから、カードに戻っても楽しめるからお楽しみに〜。キヨさんにも見せてあげよう」
フォレスター君はキラキラした目で頷いて俺に感謝のハグみたいな仕草をしてくるんだけど、この幸せが毎日の活力になる。
次は他のカードの皆にも何かしないとね、流石にこのままではフォレスター君だけ依怙贔屓してる状態で格差が生まれるわ。
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