第31話 戦う理由


『それよりも嫌なのは、自分が戦場の遠くで守られて、笑っていること』



経歴を見るたびに陸遜は生粋の軍人だよなぁって思うんですが、

陸遜が軍人になるきっかけというか、軍に携わって生きようとした理由はこれに尽きるんじゃないかなって思う



つまりこれ、陸康が死んだ盧江戦のことをまさに指すんですよ。


自分が戦場から遠く逃がされて、守られて、笑って暮らしているけど、遠くの戦場では自分自身よりも生きて欲しいと思う大切な人が包囲されて攻撃を受けながら死んで行くのをずっと味わっていたから。


陸遜の根本にはこの時の辛い記憶があるから、


そこから転じて考え方が


「待ってる方が辛い」


「だったら自分から戦地に飛び込んでそこで戦った方がずっとマシだ」


というものなんじゃないかと。


こういうところも軍人さんっぽい自ら戦いたいというか、守護者の魂の発想で大好きです





盧江戦。



実は、私は袁術の気性とか、孫策の気性とか、諸々の情勢などを考えて、最初盧江戦って数日で決着が付いたというか、短期決戦の孫策の総攻撃で容赦なく殺された、下手すると一夜で終わったような苛烈な戦いなのかと思っていたんですが、


実際には盧江戦は包囲行動から陥落まで入れると二年もの長い籠城戦だったらしいです。

そして実際には、この戦いの心労が祟って終戦してひと月ほどしてすぐ陸康は死んでるので、この戦いで亡くなったと言っていいのですが、私が当初予想していたように容赦なく城を燃やされて、そこで遺体も確認出来ないくらいになる形で死んだわけではなかったのですね



一応事実はそうなんですが、私は結構自分でイメージした数日の短期決戦で終わった盧江戦が気に入っているので、この話ではそうなっています。

いずれそれも何らかの形で書きたいのですが、「袁術は時間をかけて陸康を苦しめたがったが、激怒してた孫策の攻撃が苛烈過ぎて一夜で攻め落とした」という形の盧江戦になっています



この話では数日で終わる盧江戦ですが、

実際に陸遜が味わった、大切な人が苦しめられながら弱って死んで行く、その恐怖は、二年間も続いていたのか……と思うと逆に恐怖です


陸遜が何故あんなにも忍耐強く、魂も強く、揺るぎない人になったのか、

その根本は絶対に盧江戦に私はある気がするのです……。



一夜にして大切な人が総攻撃を受けて燃やされて死ぬことと


二年かけて大切な人が籠城戦で苦しめられ、飢えながら死んで行くこと



いずれにせよ、地獄です。


最初十代の陸遜が当主になるってどんだけ陸家成人男子盧江戦で犠牲になってんだよ!?💦って本当に不思議だったんですが、そもそも二年にも渡った包囲戦だったと聞いたら、一族離散や成人男子の大概が死んだっていうのなんか分かる気がします。


二年の間に、陸家内部にも袁術に逆らうのは無理だ早く降伏しろみたいに考えて、陸家から離れた人とかもいたんだろうなと。


つまり陸家の成人男子、陸康と共に盧江で死んだか、もうこれ以上ここにいたら危ないってことでどこか別の所に逃れたんだろうな……。


盧江戦は本当に孫家と陸家の運命の邂逅なので、三国志としては埋もれがちなのですが、呉として考えるとかなり後の運命に関わってる戦いなのです



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る