第4章 『カモミールの想い ー カモミールと月』
あれからアタシたちは、
『黒百合の地』を目指した。
SS級すら近寄らない魔族の地。
テミもミミも居なくて、正直不安ではある。
けど、ノクタがいるなら平気な気もしてた。
「そろそろ着くぞ」
光すら吸収するような、
森の中をかき分け進むと目の前に塔が現れた。
周りには、黒百合が咲き乱れていた。
「ここが『黒百合の地』…」
ここに、アタシのお母さんがいる。
「着いたっぽいが、どこにいるんだか…」
「あ…そこ聞くの忘れてた」
風と共に黒百合の香りが空へ行く。
それにつられて、アタシも上を向く。
「……この塔の上にいる気がする」
そう言って、
アタシは誘われるように塔へ向かった。
「おい!待て」
扉の鍵はかかっていなく、中へ入れた。
「…すごい階段」
「まじでこれ登る…って待ってって!」
ノクタの声も聞こえないくらい、
無我夢中で登った。
何故かはわからない。
けれど、お母さんと会えると思った。
黒百合の香りがしなくなったと思ったら、
目の前に扉が現れた。
手だけじゃない。全身に力が入る。
「おま…早いって…」
「…もう、ノクタは体力ないなー」
アタシは、ノクタの手をとる。
「ノクタ、行くよ」
なにも言わず頷くノクタ。
それだけでも、アタシは心強かった。
扉を開けると、
カモミールの香りがふわりと漂う。
その先には、お母さんと思わしき人が寝ていた。
「…あなたは…」
その声を聞いて、アタシは涙が溢れた。
――お母さんだ。あの夢で聞いた声と一緒。
その涙で気づいたのか、
お母さんが手を伸ばしてきた。
伸ばしてきた手は、痩せ細って震えていた。
「ずっと、会いたかったわ…」
「アタシも会いたかった」
けれど、その理由はお母さんとは違う。
「なんでアタシを追い出したの…?
追い出されたアタシは、
体をいじられ見た目も変わった!
そんなことさえ、
されなければアタシは普通に
暮らせたかもしれないのに…!」
体だけでなく、
表情、仕草全てからもう長くないと悟った。
恨み、憎しみを抱えたまま終わらせたくない……
「ごめん…ごめんなさい…
あなたを守りたかった。
なのに、つらい思いをさせて…」
お母さんの涙の理由は一体、なんなの――?
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