第六部
第111話 中央大陸へ渡る方法を求めて
数日が経った。
俺もすっかり元気になって、後遺症などは特に何もない。
直後はあんまり食欲もなかったが、今ではお腹も空いて沢山ご飯を食べられるようになった。
「イクスも元気になって良かったわね」
「ああ、全くだ」
――と思ったが、隣でガツガツ食べているアスラとアスラほどじゃないが俺より食べるヴァンを見たら俺の戻った食欲なんて大した事ないのかもしれない。
まぁ、それは良いとして。
今後の課題は中央大陸にどうやって戻るかである。
ここから船で中央大陸に戻るつもりが船が出ていないんじゃどうしようもない。
何か別の手を考えなければならないのだが、何かいい手はないものかね。
「スノーバードを捕まえて飛んでいく?」
「テイムって事? そんな事出来るの?」
「危険度C級以下のモンスターのテイムは聞いた事があるが、まず無理だろう。そもそもテイム能力のある冒険者自体少ない。吾輩のいた西区にもテイム能力のある冒険者はいなかった」
「ていうかスノーバードって海超えるだけ飛べるの?」
「聞いた事がないな」
それぞれ案を出していくがそうそういい案は出ない訳で。
ギルドで情報を集めたり街で聞き込みをしてみたが、良案は浮かんでこなかった。
「やっぱ無理なのかな」
先に宿に戻ったアスラと一緒に悩んでいるとヴァンが飛び込んできた。
「良い話を聞いてきたぞ!」
「魔術師が?」
「ああ、街の郊外に100歳を超える凄腕の魔術師が住んでいるらしい。なんでも探しものがあるらしくたまに留守にしているそうだが、何か良い案を知っているかもしれない」
「100歳を超える凄腕の魔術師ねぇ……」
アスラは半信半疑である。
「本当にその情報は合ってるの? もう死んでたりしない?」
「うむ、どうだろうな。ただ人嫌いらしいから本当に吾輩達の力になってくれるかは分からんがな」
人嫌いか、まあ手がないなら行ってみるしかないよね。
「一応行ってみようか、案内お願い」
「任せよ」
ヴァンの聞いてきた情報の場所へ向かうとそれは鬱蒼とした森の中にポツンと一軒家があった。
大樹の下で根に半分浸食されている木造の家だ。
隣には井戸があり、簡易の物干しざおがあり、肉が吊るされている。
こんな辺鄙な場所に住んでいるとか相当な変人な気がするけど。
「大丈夫なの?」
「うむ……」
アスラの問いにヴァンも不安になっているようだが、とりあえず会ってみなければ仕方ない。
俺らは扉を叩いた。
返事がなかったので扉を開けるとそこには一人の女性が座っていた。
「……誰かと思えば人間か」
冷ややかな目で見てくるのは緑の瞳に金色の髪、長くとがった耳、目には片眼鏡をつけた綺麗な女性。
なるほど、100歳を超えている凄腕の魔術師っていうのは間違いじゃないな。
そこにはエルフがいた。
ただ、服装がどうみてもアレなんだけどどうしてだろう。
「エルフ……」
「うむ、吾輩は初めて見た、ヌーイ大陸にはいないからな」
二人は興味津々で見ているが、そんな視線を邪魔くさそうにしながらエルフは俺らから目を逸らし、手元の本に目を戻した。
「去れ、私は忙しい」
「あの、私達はあなたにお願いがあって」
「去れ、私は忙しい」
アスラが前に出て話をしようとしたのだが、あっさりと袖にされる。
全く話を聞く気がないようだ。
「ねえイクス、駄目よ。きっと大陸に渡る方法も持ってないわこいつ」
アスラが小声で言ってくる。
まだそうと決まったわけじゃない。
代わりに俺が前に出た。
「エルフさん」
「…………」
「探し物があるって聞きましたけど、ヌーイ大陸で何を探してるんですか?」
「…………」
「俺はともかく後ろのヴァンは西区で冒険者を長くしており、アスラは北区で色んな場所にいました。何か力になれるかもしれません」
「…………」
「その探し物の話、良かったら話してくれませんか?」
俺が協力を申し出るがエルフは、本から目を離さずたまに本をめくる音が部屋に響いた。
少しの時間待ったが状況は変わらなかった。
ヴァンとアスラも俯く。
やっぱ無理か。
「……失礼しました」
ヴァンとアスラに合図をして諦めて外に出ようとしたとき。
「……大事な人を探している」
エルフが小さな声で、それでいてしっかりとした声音でそう言った。
振り向くとエルフが本から顔を上げ、俺の方を見ていた。
「人間よ、本当に私に協力してくれるか?」
「はい、その代わりそれが解決したら俺らの願いを聞いてください」
「…………」
エルフは少し考えてから。
「よかろう」
小さく頷いた。
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