第88話 A級冒険者パーティにお邪魔します



 ミト、女戦士で戦斧使い。


 リーガ、重装備の男タンクで、でかい盾と背中に斧を背負っている。


 スツァル、女魔術師。



 それが今、俺が混ぜてもらっているA級冒険者パーティの内訳だ。


 タンク一人にアタッカー一人、そして後衛が一人と割とバランスが良いと思う。


 どの人も俺より年上で、ベテランの冒険者っぽい。



 彼らが受注した依頼は、危険度B級のスノーコヨーテの群れの討伐だ。


 そしてそれに付いていくのは、F級依頼の薬草集めを受注しているF級冒険者の俺である。


 そもそも依頼内容が違うから、本当について行っているだけだ。



 流石に申し訳ないから、荷物持ちでもした方が良いんじゃないかと思って提案したら断られた。


 下手に荷物を持ったせいで逃げ遅れたら悪いから……というありがたい言葉である。


 新人にそこまで気を使ってくれるなんて……うーん、この人達相当良い人だね。



「すいません、俺なんかとパーティ組んでくれて」


「構わない、新人に経験を積ませるのも先輩冒険者の務めだ。それに3馬鹿の推薦もあったしな」



 道中話しかけるとミトは腕を組みうんうんと頷いた。


 話によると、俺を推薦してくれた3馬鹿……もとい彼らは三人ともB級冒険者であり、ミト達A級冒険者達の次かその次位に腕利きらしい。


 俺に絡んできた……デなんとかって奴が大人しく引き下がったわけだよ。



「それにしても優しいですよね、俺を推薦してくれて」


「ん? あー……君は昨日登録したんだっけか。登録した時にあいつらに話しかけられただろう」


「ああ、そういえば。一応一礼しときましたけど」



「それだ、あいつらは……普段から酒飲んでるから登録したばかりの新人からの受けが悪い。だから多分初日から無視しないで何か返してくれたのが気に入ったんだと思うぞ」


「なるほど」



 思い起こせばあれは新人からしたら、酔っ払いにからかわれているようにしか見えないよね。


 そりゃ挨拶どころか無視する奴もいるかもしれないな。



 ちらっと後ろを見ればリーガという男性は無言で歩いている。



「緊張してる?」



 いつの間にか隣にいたスツァルが声をかけてくる。


 ふわふわした雰囲気でA級冒険者って感じはしない。



「いえ、大丈夫です。ただミトさんもリーガさんも随分と大物武器だと思って」


「そうだねえ、君はヌーイ大陸でモンスターと戦った事はなさそうだね。二人が大物を持っているのには理由があるんだよ、それはね」


「これじゃなきゃ駄目なんだ」



 低い武骨な声がした。


 リーガがちらっと俺を見てそのまま目線を逸らしたまま口を動かす。



「ヌーイ大陸は寒い、から、モンスターも肉が厚く、毛も厚い、皮も分厚い、から、お前の持ってる剣は……新人が持つにしては随分上等に見える……が、なかなか倒せない」



 ぽつぽつ言葉を区切る特徴的な言い方で説明してくれた。


 もしかしたらここまで無言だったのは、口下手だからかもしれない。



「そう、リーガが言った通りだね。君の持っているような剣だとモンスターによっては折れるかもね」



 あー……なるほどね。


 出かける前にミトが替えの武器があるか聞いてきたわけだ。


 それにしても地域が違えばモンスターの特徴も違ってくるのか、勉強になるな。



 それから何回かモンスターと遭遇したが、ミト達が戦っている間、俺は雪を掘り薬草を集めていたから、すでに集め終わっていた。


 なんかパーティってよりは護衛を任せている気分である。



 それにしても……チラチラ見てたが彼らはやはり強い。


 連携もしっかりしていて、相手は危険度C級のモンスターだが余裕で倒していた。


 そのまま雪上行軍を続けていると、三人が手で俺を止めた。



「見ろ、あれだ」



 指さす方向には彼らの標的であるスノーコヨーテの群れがいた。


 二十はいそうだ。



「中央の山から下りてきたって話だが、思ったより数が多いな」


「この時期の移動は珍しいよね、縄張り争いで負けたのかな?」



「どちらにせよ、俺が壁をする。から、ミトとスツァルはいつも通り仕留めていけ。坊主はここで俺らの戦い方を見ていて良い。下手に近づくな、死ぬぞ」


「分かりました」



 正直戦ってみたかったが仕方ない。



「じゃ、行くぞ!」



 三人はリーガに続いて飛び出した。


 俺は草木に隠れながら見ていたが、リーガにスノーコヨーテが相当数突っ込んでいるがびくともしない。


 一際重そうな鎧やらを着込んでいるだけあって防御力は高そうだ。



 そして、リーガに群がるスノーコヨーテをミトが次々仕留めていき、続けて集まった所にスツァルの上級魔術が炸裂する。


 数がどうこう言っていたが、それをものともせずほぼ倒してしまった。



「終わったな」


「ああ、坊主。残りは弱っている二匹だ、もう出てきていいぞ」



 呼ばれたので出ていった。



「余裕でしたね」


「うん、後は……イクス君だっけ、君やってみる?」


「手負いだがそういう時ほど気を付ける必要がある。やってみろ」


「はい」



 氷獣王の宝剣を片手にじりじり近づくと、どこかから咆哮が聞こえてきた。



「これは?」



 俺が動きを止めると三人も周囲を警戒し始める。



「なんか嫌な予感がするな」


「あの声、どこかで聞いたことあるよ」


「私もだ、この鳴き声は確か……っ! まずい、退く……」



 ミトが指示を出す前に、スノーコヨーテは血を流したまま逃げ始め。


 更に地面に大きな影が出来た。


 俺が上を見上げるとそこには、スノーコヨーテとは比較にならない大きなモンスターの姿がある。



 大きな翼に鷲の上半身、そしてライオンの下半身。


 ブレスを吐き、炎魔術を使い、空を飛び回る厄介なモンスター。



「あれは……」


「ちっ、それであいつら中央の山から逃げて来たってか」



 危険度特A級に分類されるモンスター、グリュプスが俺らを見下ろしていた。

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