第87話 ギルドの洗礼? イクス絡まれる



 部屋に入ると我が主が不機嫌そうな表情を浮かべていた。



「ビネッサ様、いかがいたしましたか?」


「……ネイズが死んだ」


「ああ、確かビネッサ様が気にしていました人間の所へ行ったんでしたか。ですが役目を果たしたなら」



「いや、最低限の仕事はしたけど……これからヌーイ大陸へ向かう」


「は……ビネッサ様自らですか? お待ちください、ならば私が先に行きます。ビネッサ様はその後に」



「お前がか……。分かった。だがネイズがやられた位だ、気を抜かないようにね」


「ははっ」



 頭を下げつつ主の様子を見ると、やはり不機嫌そうに窓の外を見つめていた。



☆☆☆



「もうパーティを組んでしまってね、他を当たってくれ」



 F級の依頼じゃ決して金を稼げない。


 ならどこかのパーティに入れてもらって、複数人でやったら薬草も量取れて良いのではないかと考えたが駄目だった。



 まあ、もうパーティ組んでる所には入れないよね。


 俺は先日受付のお姉さんから貰った冒険者カードを見つめる。


 電車の定期券に似た形のそれにはしっかりとF級冒険者と書かれている。



「モンスター位倒せるのになぁ……」



 ギルド直結の食堂で水を一口飲み、机に突っ伏した。


 大人しく薬草探しでも行こうかと考えていると隣に数人が立っているのに気づく。



 見れば俺と同じ年位の奴らだ。


 先頭の男は確かデドラとかいう片手斧使いのC級冒険者だ。


 随分と険しい顔をしているが一体何の用だろう。



「何か?」


「お前新入りのくせに生意気だぞ!」



 開口一番怒鳴られた。


 早口でガーガー言われたが彼の言い分はこうだ。



 新人でF級のくせにパーティを組もうとするなんて生意気だ、俺は最初一人だったぞ。


 どうせモンスターと戦えない程、弱いんだから薬草を必死に探すべきだ。


 俺は才能があるからあっという間にC級に上がれたがお前は違うんだ。


 弱者がいるのは目障りだからギルドから去れ!



 ――とのこと。


 とりあえず生意気で目障りだって言いたいのは分かった。


 けど最初にパーティ組もうと声をかけるのは自由じゃね?



 実際F級でパーティ組んでる奴いっぱいいるし、それに後半に言ってた弱者はってのも、最初は皆弱いだろうし弱いからギルドから去ったら十年後には誰も残らないと思うが……。


 理不尽に怒っているのをぼんやり見ていると横の机から笑い声が聞こえてきた。



「おうおう、デドラ坊。新人いじめか?」


「ひひひっ、やめとけやめとけ。ギルドの期待の星がそんな事したら名が泣くぞ」


「そうだぞ、B級冒険者のルード様が怒ってるぞ。ひゃっひゃっひゃ」


「馬鹿、怒ってねえよ。あとおめえもB級だろ」


「そうでした、ひゃっひゃ」



 見れば酒を飲み赤ら顔の冒険者達が笑っている。


 最初に俺に頑張れって声をかけてくれた人らだ。


 窘められたデドラは、ふん……と鼻を鳴らして仲間達と去って行った。



「ありがとうございます」



 礼を言うと冒険者達は酒の入ったジョッキを飲み干す。



「ひひ、絡まれる新人は大変だなあ」


「デドラ坊も焦ってんだよ、あの年でC級まで来たのにここ一年てんでB級に上がれねえからなぁ……」


「実力が伸び悩んじまったから、自分と同じ位の新人見つけるとすぐに突っかかるんだ」


「そうなんですか?」



 はた迷惑な奴だ。



「デドラ坊からしたら、越されちまったら困るからなぁ」


「ひひひ、気にすんな。それにパーティならミトんとこ一回行ってみるか?」


「ミト?」



 誰だろう。



「A級冒険者パーティでうちのギルド一の凄腕よ、たまにお前さんみたいな新人を連れて冒険行くんだよ」


「経験を積ませるっつってな。新人の頃にA級冒険者と行くとな、いい経験になるんだ」


「さっきのデドラ坊だって最初ミトに付いて冒険行ってから伸びたんだぜ」


「へぇ……」



 優しい冒険者もいるもんだ。


 でも最初にそういう修羅場を一回経験させるってのは大事だよなぁ……。



「……と、噂をすれば。おーい」



 一人が手を振ると三人のパーティが近づいてきた。


 先頭を歩くのは甲冑を来た綺麗な女性だ。



「はぁ……ルード、ガイ、リフタ。お前らはどうして冒険に行かずに昼間から酒を飲んでるんだ」


「俺は悪くねえ、ガイが先に飲み始めたんだ」


「ひひ、確かに俺が先に飲んだけど仕事はしたぜ。俺らは新人を守ってたんだ。良い仕事したと思うぜ」



「おうよ、このリフタもこれから仕事をするんだ。なあ、えっと……誰だっけ? ひゃっひゃ、名前聞いてなかったわ」


「イクスです」


「そう、イクスっていう期待の新人をミトに紹介しようと思ってな」



 バンっと背中を叩かれた。



「F級、確かに見ない顔だな」


「そうさ、昨日登録したばっかの新鮮そのものだぜ」


「ほう……」



 ミトはちらっと俺が持っている剣を見た。



「その剣が君の武器か?」


「はい、そうです」


「ふーん」



 目を細めて俺をじっと見てからため息をついた。



「まあいい、3馬鹿がそこまで言うなら連れて行ってやろう。二人は良いか?」



 ミトは後ろへ振り返り仲間二人の了承を得た。



「私はミト、少しの間だがよろしく」


「こちらこそよろしくお願いします」



 手を出してきたので俺はしっかりと握手した。

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