第2話 遭遇、ホンモノ未来人
謎の転校生、
そしてむかえた放課後。…今日一日の感想を発表します。「最悪」でした。
瀬崎さんに声かけられたのは、朝の一回だったが、相浦みらはその瞬間から、「転校生に見初められたクラスメイト」へと勝手に昇格し、噂はあっと間に広がりクラス関係なく奇異の目で見られることになった。
理不尽…ッ。理不尽だ…見初めてきたのは瀬崎さんなのに、どうして私まで注目されちゃうの…。
まあ今日一番注目されてたのは、今私の隣を歩いている瀬崎さんなんだけどね。
瀬崎さんの様子をたまに見ていたりしてたけど、言葉を選びつつ、一生懸命話してる感じだった。まあでも、カワイイからなにしてても許しちゃうし、そもそも気にならないな。
「相浦さん」
「は、はい…どうしたんですか?」
周りに人がいなくなったところで瀬崎さんが声をかけてきた。
「相浦さんに、話したいことがあるの」
「はあ……」
瀬崎さんは、少し迷ったように俯いて目を泳がせると、決意を込めた表情で私と向き合った。
やばい、美人と目が合うと緊張する…ッ。
「私実は……」
「2125年の未来からやってきたんですっっ!」
「……」
うん。でしょうね。
そうだと思ったよ。「にせんひゃ…」とか、「近くのルミ学」とか言ってたし。
これで未来人じゃなかったら宇宙人か、世界一おもしれー女かを疑ったところだよ。普段からタイムスリップものの漫画と小説をひとり読み漁る生粋のオタク相浦みらを舐めないでほしい。
「あの…相浦さん?」
さっきから心の中で感想を述べるだけで何も言わない私に瀬崎さんが声をかけた。
「ごめんごめん。自己紹介のときからなんとなくそうかな、と思って」
「そうだよね。ありがとう。あのとき、なんだか誤魔化してもらっちゃったみたいで」
「ううん、大丈夫。未来から来たことは、隠さなきゃなんだろな〜って思っただけで…っていうか私には言っていいんだ!?」
自分で口に出しといて勝手に驚く私に、瀬崎さんが慌てて訂正する。
「あ〜えっと。本当は知られたら駄目なんだけどね、担任の先生が私のこと心配して、一人くらいには教えてフォローしてもらってもいいって」
…やっぱりドジっ子キャラか。
「まって、担任の先生…?過去に来たのって、学校の課題なんだ?」
「そうなの。2125年にはタイムマシンが普及しててね。2ヶ月間過去に行って、現代…2125年と2025年を比較して、それぞれの長所と短所をまとめなさいっていう…いわゆる留学?みたいな」
「なるほどね…」
私が感心していると、再び瀬崎さんが私の両手をとって懇願してきた。
「私、未来人ってことが他の人にバレたら、その人の記憶を消さなきゃいけないし、評価も下がっちゃうの!お願い相浦さん!私がドジしないように、見張っててほしい!」
そ、そんなっ、絶対面倒なことになる!目立つ!やめてってば、そんな雨の中拾われるのを待ってる子犬みたいな目をしないでぇ…ッ!
私が理性と庇護欲の狭間で押し黙っていると、瀬崎さんは私から手を離し、思い詰めた顔をして呟く。
「ダメ?…なら、相浦さんの記憶を消すしか……」
「や、やるっ!記憶消すのなんか怖そうだし!!」
「ほんとぉ?嬉しい!ありがとう相浦さん!」
私は未来の技術にどうこうされる恐怖からテキトーに返事をしただけだったのだが、了解の返事を聞いた瀬崎さんは満面の笑みで私にぐいっと近づいた。
うわ顔近っ。かわいっ。抱きしめられてたら色んな意味で死んでたところです。
瀬崎さんはうってかわってお散歩にいきたがる子犬のような様子で言葉を続けた。
「じゃあじゃあっ、今から私の家に来てくれない?色んなこと話したくてっ」
いやさすがに急展開です。
実をいうと、私今まで親戚以外の他の人の家にあがったことないんですが。…なんだよ文句あるか。
まさか私のはじめてがド美少女未来人になるとは思いもよりませんよ。う…。
まってって。その濡れ子犬顔やめてよ。自分の魅力に気づいてない美少女が一番恐ろしいんだよ。ついでにお茶が一杯こわい。
「……いいけど、私の親がお仕事から帰る時間までね」
…だからって、はじめてあがったクラスメイトの玄関で、明らかに未来のコンピューターなるものと、明らかにタイムマシンなるものを見ることになるとは思いもよらないじゃありませんか。
連れてこられたのはなんだかオシャレなアパートの一室。ドア開けた瞬間にこの異様な光景が広がったもんだから、私は驚く通り越して口が自然に空いてしまった。
こんなに可愛らしい子なら、もう少し部屋を盛っていてもいいものかと思ったが、未来からやってきたばかりなのだろう。タイムマシンを置くのに精一杯なんだとわかる。
「ごめんね、なんだか殺風景で…」
瀬崎さんが申し訳なさそうに言ったが、私はこの光景を殺風景とは絶対言わない。だってすごいよこの未来感。
コンピューターは青い電子でできたパネルが絶えず動いているし、タイムマシンは私たちが思っているより細くてかなりスマート。高さも2メートルくらいで人が1人入れるような、いわゆる受話器の無い公衆電話みたいな見た目。
これが未来の普及されたタイムマシン…!青春をエンジョイせず、まともな思春期を通らぬままここまで育ったオタクガールみらにとっては興奮さめやらぬ気持ちだ。
…まずは、ありがとう。未来人。
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