二 寧楽京へゴー!
帝のびっくりな
その老いた陰陽師とは、数年前に百歳をこえたしわくちゃ顔のおじいさんです。自ら「百歳
「百歳老師よ、一大事だ! 帝が
「そのことなら心配はいりませんですじゃ。
「……ほ、本当であろうな? 『
「ふぉふぉふぉ。大船に乗ったつもりでいてくだされ」
「計画の
「ハハッ。……しかし、倉持さま。せっかくご自分の
「フン! あのお子ちゃまめ。ワシがせっかく
「…………くくく。どこまでもわがままなお人じゃわい」
「ああん? 何か言ったか?」
「いえ、何も」
「とにかく、とうとう藤原氏が天下を取る時が来たのだ。都の鬼
それからしばらくして――。
「宮廷で働く
といった内容が書かれた立て
彩女とは、帝の身の回りのお世話をする下級女官の呼び名です。「宮廷を
この立て札は、妖狐族が暮らしている
「コンコーン! あこがれの都に行くちょうどいい機会だね! わたし、彩女になっちゃう!」
とある狐耳の女の子も、立て札を目にして、採用試験を受けるべく都に行くことを決心しました。
そう。物語のプロローグで登場した、あの妖狐の少女・
瑞穂は旅の
「ここが寧楽京の入り口の
大きな門をぼへぇ~とのんきに見上げていますが、瑞穂はだいじょうぶなのでしょうか。そろそろ試験会場に向かわないと、遅刻しちゃいますよ?
「よぉ~し! 試験、絶対に合格するぞぉ~! そして、都にいるはずのあの子にもう一度会うんだ!」
それから三十分後――。
「びえぇぇぇん‼ 道がわからないよぉ~‼」
瑞穂は泣きべそをかいていました。
ザ☆迷子です!
瑞穂が今いる道は、(本人は知らないけれど)寧楽京のメインストリート、
なぜなら、道の左右に高さ六メートルもある
首をグルグル回しても、見えるのは、
「迷子になっちゃったよぉ~。試験会場はどこぉ~?」
狐耳をペタンとたおし、
都ではほとんど見かけない、珍しい妖狐の少女が、えんえん泣いているわけです。道行く人々は、何事かと思って瑞穂をちらちらと見ていました。
でも、気にしつつもだれも助けてくれないのが、世間の冷たいところ。瑞穂の足元に涙の小さな湖ができても、「どうしたの?」と声をかけてくれる人はいません。
「そこの妖狐さん。どうかしたのですかニャン」
と、話しかけてくれたのは、同じ妖怪仲間だけでした。
瑞穂がおどろいてふりむくと、そこにはくりくりおめめの女の子がにゅふふ~んと笑いながら立っていました。
どうやら、猫の妖怪のようです。猫耳と尻尾は虎柄で、髪の毛も茶と黒がまざっています。髪形は尼さんみたいなおかっぱ頭です。
「ぐすん……。彩女の採用試験を受けにきたのに、迷子になってしまったの」
「にゅふふ。さっきから同じ場所をうろうろしていると思ったら、やっぱり迷子でしたかニャン。上等な
猫の少女は、(ニャン語尾であることをのぞいては)とても
「ここは都の大通りの朱雀大路ですニャン。このまま北にまっすぐ行けば、帝がいらっしゃる
「え⁉ そうなの⁉ ありがとう、猫さん!」
「おっと、待つですニャン。彩女の試験会場は宮城じゃないですニャン」
猫の少女がそう言うと、瑞穂は「ほええ⁉」とびっくりしました。
彩女募集の立て札にはちゃんと試験会場の場所が書かれていたのですが、どうやら瑞穂はちゃんと読んでいなかったようです。たぶん、
「ぷぷぷ。妖狐といったら妖怪の王とまで言われているのに、本当はあんまりたいしたことないみたいですニャンね。あたしも彩女の採用試験を受けに行くところでしたから、ついでに連れて行ってあげますニャン」
「あ……ありがとぉ~! 助かるよぉ~! わたしの名前は瑞穂。よろしくね」
「よろしくしないですニャン。あなたみたいなポケポケは試験に絶対に落ちるですニャン。
「トライニャン? 何それ? おいしいの?」
「いいから、さっさと行くですニャン。試験に遅刻したら大変ですニャン」
如虎という名前の猫娘は、瑞穂の手首を
めざす試験会場は、寧楽京の中にある大きなお寺――
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