第10話





ユートのダンジョンの木が世界樹と判明してから半月

ソエルは週一で様子を見に行っていた


世界樹は順調に成長しており、このままいけばあと数ヶ月以内には結界が発生すると見込まれる


ソフィアにはこれまで通り薬草の栽培管理をしてもらっている

ユートには他のダンジョンから食べられる植物の採取を頼んでいる


一般には普及していないがダンジョンには食べられる果実なとが多数存在する

エルフの国では食料のほとんどがそれで賄われている


ダンジョンでしか自生出来ない為、こちら側では研究の為に管理された一部のダンジョンでしか栽培されていない


探索者たちもダンジョン内で消費してしまうので地上にはほとんど出回っていない


ソエルはユートのダンジョンにこれらの食用可能な植物を新たに栽培することにした

ゆくゆくはエルフの国のようにダンジョン内で生活可能にする為である


ユートのダンジョンで他に足りないものは水源や住居等とまだまだ多いが少しずつ整えていく予定だ








ダンジョン管理局本部局長室


部屋にはユートの叔父である局長とソエルの二人



「局長、今日は局員ではなくユグドラシア大使としての相談になります」



どこかのダンジョン内に存在するエルフの国 ユグドラシア

門が消失する以前はその大使をソエルが務めていた



「ここ最近ユートのダンジョンに行く頻度が多くなりましたね。何か問題が起きましたか?」


「報告が遅れて申し訳ありません。実はあのダンジョンに世界樹が生まれました。正確にはユートが世界樹を育てています」


「…世界樹ですか。それはユグドラシアにあるものと同一ということですか?」


「親子みたいなものですかね。ユートが昔ユグドラシアで拾った種から育てたので」


「ユグドラシアから持ち帰ったものですか。確かあの国の持ち出しは厳しいと聞いてましたが」


「そうですね。許可のない持ち出しは厳罰が下りますが同行者があの二人ですし大した確認もされなかったのでしょう。種なんて小さいものが持ち出されても気が付かないでしょうし。それに当のユートも持ち帰ったあとは忘れていたそうですし」


「はぁ、兄貴たちだから仕方ないか。しかし問題にならないのであればいいのですが」


「おそらく問題ないと思いますよ。世界樹に近づける人間は限られていますし、種や果実を落とすことなんて聞いたことがありません。きっと世界樹がユートのことを選んだのでしょう」



ソエルの知る限りでは世界樹が果実や種を授けたという話は聞いたことがない


落ちた葉や枝を神事や薬に利用することはある

もしかしたら女王や巫女なら知っているかもしれないが少なくとも今はわからない



「そうですか。ユグドラシアと敵対することにはならないようで安心しました。ですがまだ本題があるのでしょう?我々ダンジョン管理局に何を求めますか?」



ダンジョン管理局


ダンジョンが発生して以降全世界に設けられた機関で権限は国を跨いで行使出来る強大な組織である

特にダンジョン管理局本部はその中でも上位にあたり

世界では

日本 アメリカ イギリス ロシア の4箇所しかなく

本部局長は国連を動かせるほどの力を持っていた



「私、いえ我々が希望するのは神木ユートの所持するダンジョン及び彼の自宅周辺をユグドラシアの自治区にする許可を戴きたい。それに付随して残留するエルフ全員を自治区に居住することを希望します」


「…ユートはこの事について何か言ってましたか?」


「ダンジョンと家をそのまま使えるなら自治区にすることは問題ないそうです。ただ他のエルフの住居は別の家にして欲しいとのことです」


「ユートはそのまま住むんですね。ソエルさんたちは問題ないのですか?」


「私たちは世界樹の近くにいれるだけで充分ですから。それにユートとは知った仲ですし問題ありません。部下たちも同じです。何より世界樹に認められた彼を追い出すなんてこと出来ませんよ」


「そうですか。ユートがいいのなら許可しますがいつ頃公表しますか?この件が与える影響は世界的にも大きいものになりますから」


「そうですね。少なくとも世界樹の結界が出来るまでは伏せておいて下さい。その間にこちらも色々と準備をしておきたいので。結界は数ヶ月以内には出来ると思います」


「わかりました。では世界樹の結界が出来たタイミングで公表しましょう。それまでこの件に関して我々のみでやり取りすることにしましょう」


「よろしくお願いいたします」





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