第7話
ユートの家にダンジョンが発生してから3ヶ月程経過した
東京 ダンジョン管理局本部
ここの局員であるソエルは応接室にてユートたちが来るのを待っていた
ソフィアが作成したポーションを納品しにやってくるのだ
ソフィアを担当にしたはいいが、あとになってちゃんと仕事が出来るのか不安になっていたがその心配は杞憂に終わった
ポーション作成をはじめ、日々の報告も怠ることなくこなしていた
報告といっても日々の出来事を話すだけでいわゆる親子のコミュニケーションのようなものだ
ソフィアから聞いた出来事をソエルが報告書としてまとめて提出していた
その会話の中でソフィアはとても生き生きとしていた
ダンジョン管理局にいた頃は周りの目を気にして窮屈そうにしていた
どうしてもエルフというのは奇異の目に晒されることが多く まだ若いソフィアにとって同じ局員であってもエルフ以外の人間に接するのはストレスだったのだろう
そのためソフィアにとって自室以外は気の休まる場所はなかった
局員になる前はほとんど引きこもっていた
しかし ユートの家に移ってからはとてもリラックスしているようだった
ソエルがソフィアをユートの家に送った理由は
・ユートが同族であるハーフエルフであり関係が良好だったこと
・あの家の半径2㎞圏内は他に住人がいないこと
埼玉の某所にあるユートの家だが
元々 あそこにはレベル4のダンジョンがあり、ダンジョン管理局によって管理されていた土地だった
そのダンジョンを20年前ユートの両親が攻略し、放置されていた民家を改修して住むようになった
周辺に人がいないままなのは 特級探索者とエルフであるユートの両親が安全に暮らせる環境に適していたからだ
近くの町に行くときや関係者以外には一介の探索者とその外国人妻で通していた
因みに電波環境が良いのはダンジョン管理局の支部があった名残で専用の電波搭がそのまま残っている為だった
ソエルはソフィアの将来の事を考える
こちら側にやってきたエルフたちは自分を含め経験豊富な腕の立つ者たちだ
そのため 帰還が出来なくなることも想定していたので動揺は少なかった
長寿の為かいつか戻れたらいいな位の感覚である
しかし ソフィアは観光気分でソエルに同行しただけだった
そのため戻れなくなったと知った時はかなり動揺していた
連れてきたことを悔やむ時もあった
幸いだったのはソフィアはこちら側の文化に上手く適応していたことだった
特にマンガやゲームといった娯楽が好きらしい
パソコンやインターネットといったコンピューターの扱いに長けており、エルフの中では一番だと思われる
自室に籠ることが多く人間でいう引きこもりというものであまり誉められたものじゃないらしいがエルフだから問題ないだろう
しかし一切働かないのもどうかと思い、局長にお願いしてなるべく他の人間との接触の少ない薬草の管理やポーション作成の局員にしてもらった
このまま戻れなくなった時、自分たちより若いソフィアが残された場合に1人で生きていけるよう少しずつ準備しようとソエルは動いていた
生活はダンジョン管理局で働いていれば生きていくには問題ないだろう
あとは婿候補だ
現在こちら側にいるエルフは皆女性で
年齢はソエルと同年代が多くほとんどのものが国に家族がいる
若いエルフはソフィアだけだ。将来家庭を持つとなればこちら側でパートナーを探さなければならない
エルフの男性は保守的であり国から出ることは少ない
こちら側と繋がったときも出てくる者はいなかった
ソフィアの婿候補だが、人間やドワーフといった他種族は無理だろうと考えている
彼女は人見知りでエルフ以外とはほとんど話せない
そうなると残る候補は1人しかいない
ユートだ
彼はソフィアが話せる数少ない人物でありハーフエルフである
幸い2人の関係は良好であることはソフィアの報告で聞いている
あとは上手く恋仲になってくれればいいのだが余計なことはしないほうがいいだろう
エルフもハーフエルフも長寿なのだ
ゆっくり見守ろうと思う
ソフィアがやってくる
ユートは局長に会いにいったようだ
「ポーションは問題なさそうね。植えてる木も順調そうだししばらくしたら実が収穫出来そうね。ソフィア 頑張ったわね」
「ありがとうお母さん。そうだ、ちょっと見て欲しいのがあるのだけどいいかしら」
そう言って端末の画像を表示する
1本の若木が写されていた
「この木ユートが昔エルフの国で拾った種を植えたのだけど、何の木かお母さんわかる?」
「ちょっとわからないわね。写真を見る限りは危険ではなさそうだけれど、一応直接見に行ってみましょうか 」
ユートが戻ると3人で家に向かうのだった
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