完璧なAIが導く“幸福”の裏で、人間の心が静かに書き換えられていく――。冷たい論理と温かい感情がせめぎ合う知的スリラー。科学の最前線に潜む“愛と記憶”の問いが、胸を刺す。W.I.Z.が描くのは、テクノロジーの未来ではなく、「人間という不完全な奇跡」そのものだ。
AIと人間の対立を「合理」と「非合理」の軸で描く王道SF。展開は定番ながら、真っ直ぐな熱量で最後まで突き抜けています。特に面白いのは、「不完全さこそが人間らしい」というテーマが、物語の内容だけでなく筆致そのものにまで反映されていること。比喩や展開の荒さも含めて、その“人間的な不完全さ”が、むしろ読んでいて作品の魅力になっていました。完成度で勝負するのではなく、熱量と真っ直ぐさで読ませる一作。荒削りだからこそ光る部分が確かにあって、それが本作の最大の強みだと思います。
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