海馬高校 想い出研究同好会

ささがき

プロローグ

宣言


 新学期。それは、新たなる地へ、期待を膨らませて飛び立つ時。あらゆることが手探りで、何もかもが分からなくて、それでもただ希望だけを胸に抱いて踏み出す季節。無論、そこには憂慮も、葛藤も付き纏う。でもそれを蹴散らして、書き換えるほどの光がそこにはあるのだ。

 入学したての、まだうら若き学生たちが新芽のように頭を揃えている。赤い上履きがツヤツヤと光りながら並ぶその様はまさに絶景で、見下ろせることを誇りに思うほどだ。その並んだ新入生の中、ちょうど中央辺りに座っている、ポニーテールを揺らした少女。手元の資料に目を落としていた彼女は、不意に登壇した学生の正体に気づくと、きゅるんと目を丸くした。その瞳の中に驚きはあれど、焦りや不安は何もない。その純粋な色と輝きに安堵を、そして少しの羨望を抱きながらも、青年は─────菅野雷花は、高らかに宣言した。


「今、ここに、想い出研究同好会の設立を宣言します!」

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