第2話 部活

「うぉっ!」

 どさっ

「大丈夫?春香」

 落ちてきた春香を上に階段から落ちた。背中がいたい。

「なんで…!」

「やっぱ無理じゃん。持ってくね」

 驚く春香に笑いかけ、プリントを広い持っていく。

「……あ、ありがと」

 すねたような、うれしいような、そんな春香の声が聞こえた。

「いーえ。これ、どこ?」

「あ、そこ。」

 言われたとおりに置く。

「さ、部室戻りますか。久しぶりだなぁ、楽器。」

「……あ、あのさ、何でこの学校に…」

 ……あー。それか。聞かれるとは思ってた。

「……聞こえてた?慧惑高校にいたの」

「まあ、うるさかったので。成瀬が」

 ……海のせいか。

「まあ、表面ではつまんなかったから。学校も、友情もおもんなかったし。」

「表?勉学とかじゃなくて?」

「そう、表。勉学へ全然平気だった」

 驚いた顔をする春香。

「……裏…本心は会いたい人がいたから。その人がいないとつまんなくて。」

「会いたい人?」

 静かにうなずき、口を開く。

「彩の…お姉さん。」

「……彩ちゃんのお姉さん…三年のトランペットパートの?」

「そー。お世話になっててさ」

 目を伏せ、中学一、二年のことを思い出す。

「努力家なのは知ってるでしょ?優しくて、かっこよくて。教えることに時間気にしなくて、始めて銀河で一番好きって思った人。」

「そんなに…?彩ちゃんは知ってるの?」

「知ってるよ?だって熱弁してたし。仲良かったし。彩のことも好きだけどね」

 さみしそうな目をして春香が言う。

「私もいたなあ。好きな先輩。ボーンの先輩でさ。みやび先輩って言って。今大学卒業してたかな。たまに来てたの、中学で。」

「へー。どんな人?」

 すると春香は少し笑って答えた。

「まんま秋。ヤンキーだったし、好きな先輩に一途だった」

「ヤンキーじゃないよ?!先輩とか、大事な人にいやがらせしてくるやつボコすくらい」

 ぷはっと春香が笑った。

「雅先輩すぎるでしょ。」

「えー?んー。春香が言うならそうかも」

「あ、でも雅先輩はイケメンだったから違うわ」

「はあー?さっき階段でかばいましたけど?」

 自然と笑いが起こる。横目にはそれを見て微笑む部長と、彩、海がいた。


 次の日

「おはよー」

 教室に入る。

「……おはよ。秋」

「おお!秋はよ!」

 最初に返してくれたのは春香と海。

「…おはよう」

 隣の席の子も返してくれた。

「おはよう!名前聞いてもいい?覚えられなくて」

「私は桐蔭 夕菜とういん ゆな

 優しく笑い、夕菜が答える。

「えっと、夕菜でいい?」

「うん、秋。」

 ……夕奈はなんというか、不思議な美人系な気がする。優しい雰囲気をまといつつ躊躇なくいろいろ言ってきそう。

「……失礼なこと考えた?」

「え?!」

 なんでわかって…失礼か?

「秋。彩ちゃん来てる」

 春香が入ってきた。ドアのほうを見ると彩がいた。

「ありがと!夕菜、ちょっとまって」


「彩、どした?」

「いや、昨日菜月なつに―――」

 菜月というのは彩の姉である。私の好きな人とでも言おうか。いや、恋愛感情はほぼないが。

「まじで?やばあい!早く部活にならないかなあ!」

「先輩はしゃぎすぎ。かわいすぎですって」

「かわいくないよ?彩のが可愛いって」

「いや、先輩のが」

 そんな会話を永遠と繰り返す。中学の時を少し思い出し懐かしくなった。

「じゃあ、また部活でね。彩」

「はい!」


「秋、上機嫌過ぎない?」

 少し引いた目をして春香がいう。

「その見た目でその反応は少し気持ち悪いというか。」

 …ほらね?!言ったでしょ?!こういう感じまとってたんだよ!夕菜!

「……なに。普通に引くんだけど」

 か、海まで!そこまで言わなくてもいいじゃん…。

 早く部活にならないかなあ。

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