平和な吹奏楽部に先輩大好きガチオタヤンキーが来た

春木維兎 -haruki-yuito-

プロローグ

 ごく普通だった彗星すいせい高校吹奏楽部。

 吹奏楽部に怖いイメージはほぼないだろう。

 二年生に来た一人の転校生によって覆された。


「どーも。転校してきました。宮城 秋みやしろ あきでーす。」


 バチバチのピアス。長い黒髪。いろいろなところにできた傷。いわゆる不良だ。

 ざわざわと教室内が騒がしくなる。


「吹奏楽部、トランペットきぼーです」


 のんきそうに口を開く。

 その声に学級委員、大山 春香おおやま はるかが反応する。ガタンと椅子の音を立て立ち上がる。


「吹奏楽部に入るつもりなの?」


 彼女は吹奏楽部、クラリネットパート。彼女が嫌というのも無理はない。この学校の吹奏楽部はあまり強くない。部員も42人。これ以上増えても負担になると考えていた。


「そーだけど。めーわくはかけないよ。」


 まっすぐな声だった。その声に春香は黙ってしまった。


「ってことでよろしく。しょっぱなから喧嘩なんてごめんだからね」


 あっさりと終わってしまった。もっと続くのかと……誰もが思っていた。


「あんたも吹部だよね。案内して。ほーかご」

「あ、ああ」


 近くにいたやつに声をかけ、席に着いた。

 

 秋が転校してきた理由をまだ誰も疑問には思っていなかった。

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