1-7 故郷への想い

 少し危ない場面こそあったものの、結果的には無傷で戦闘を終えたマリウス達。


 盗賊達が貯め込んだ財宝は更に奥の部屋に隠されており、後で軍から人を派遣して接収する予定となった。


 マリウスはアベイルにも事情を話し、奴隷商館の商人と盗賊達が繋がっている証拠を探し…幾つかそれらしき書類を発見する。


 二人は洞窟を後にし、入り口で待っていたカイと合流した。


「よう、待たせたなカイ」

「二人とも無事か?全く…せめて一人ぐらいはこちらに獲物を逃してくれれば良いものを」

「はははっ、すまんな。俺の思ってた以上にマリウス殿が凄かったのだ。カイにも見せてやりたかったな」

「正直危ない場面もあったし、まだまだだよ。アベイルこそ大したものだったし、次の機会があれば是非カイの腕も見せて欲しいな」

「そうだな、その時があれば存分にこの腕前を披露しよう」

「ふん…ただの馬鹿力のクセに」

「なんだと?」


 アベイルがカイに憎まれ口を叩くと、ちょっとした口論になった。この二人にとってはいつもの事なのだろう。


「しかしマリウス殿は剣の腕も大したものだが…広い視野に状況判断の的確さ。正直あんたの下で働いてみたい、って思っちまったな」

「馬鹿、滅多な事を言うな。確かに気持ちはわからんでもないが…」

「二人が一緒なら凄く心強いけど、流石に許可して貰えないだろうしね…」

「姫がマリウス殿に着いていくような事があれば、護衛として付いていく事はあるかもしれんがな––––––ん?何の音だ?」


 パカラッ、パカラッ、パカラッ–––––。


 三人は話を止めて耳を澄ませる。微かに馬が駈ける音が聞こえて来る。音は少しずつ近くなっているようだ。


「こんな所に何だって言うんだ?もしかして賊の生き残りか?」

「…とりあえず身を隠して様子を見よう」


 マリウスの案に二人とも頷き、茂みに身を隠す。やがて馬に乗った人物は近付いてきたかと思うと辺りをキョロキョロと見回していた。


 暗くて姿がハッキリとは見えないものの、マリウス達にとっては馴染みのある人物だった。


「あれは…フォーダ?」

「間違いない。あの真っ白な馬に乗ってるのは姫様だけだ」

「しかし、姫がわざわざここまで来たという事は…町に何かあったのか?」


 三人がフォーダの前に姿を現すと、一瞬フォーダは驚いた表情を見せたが…すぐに馬から降りてマリウスの元へと駆け寄り、そのままマリウスの胸に飛び込んだ–––––。


「ど、どうしたの?フォーダ」

「マリウス様っ…どうか、ハコンダテを救う為にお力をお貸しください…!」

「とりあえず落ち着いて、何があったか教えてくれるかい?」

「は、はい…実は–––––」


 マリウス達が野盗のアジトへと向かった後、タイミング悪く海賊達の襲撃があった事。迎撃するにしても敵の数が倍以上いてかなり厳しい戦いになる事。フォーダの父はフォーダだけでもと逃した事が彼女の口から語られた。


「くそっ!よりによって俺たちが出払っている隙に襲ってくるなんて…」

「しかしそれほどの大軍で攻めて来ようとは、確かに状況は厳しいかもしれんな…」

「お父様からはお三方と合流した後は、生き延びる事だけ考えよ––––と言われましたが…私は故郷を、お父様を見捨てる事など出来ません…!私の願いを叶えていただけるなら、この身も心も全てマリウス様の為に捧げます––––」


 そしてフォーダの懇願に続くようにして、アベイルとカイの二人もマリウスの前にひざまずき…頭を下げる。


「俺たちからもお願いします…マリウス殿。生まれ育った故郷を黙って踏み荒らされるわけにはいかないんだ…!」

「…我が軍には残念ながら軍略に秀でた者がおりません。しかしマリウス殿の知恵をお借り出来れば、或いは戦局を変える事も出来るやもしれません」

 

 そしてアベイルとカイは胸に手を当てながら、己の覚悟を誓いの言葉として発した。



「「我らの願い聞き届けていただけるなら、これからこの命––––マリウスに捧げましょう」」



 マリウスも祖国・ナイティア王国を愛する人間として、彼女達の愛国心に胸を打たれた–––––。


「三人とも、頭を上げて…君達の覚悟はよく分かったよ。さっき話してくれた僕に身を委ねるって言う話は一旦置いておくけど、僕で良ければ喜んで力を貸すよ。さて、時間が惜しい––––早速作戦会議と行こうか」


 マリウスの言葉で三人の心に希望の火がともる。彼の言葉は不思議と安心感を与え、この人に任せれば大丈夫と思わせてくれるものだった。



 果たしてマリウス達、そしてハコンダテの町の運命や如何に⁈



・フォーダが仲間に加わった!



 〜第二章に続く〜


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[あとがき]

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


 第一章はこれで終わりで、ここまで登場したキャラのキャラ紹介とパラメータを羅列してから第二章に入っていきたいと思います。


 一話毎の文章ですが、戦闘があるパートはどうしても長めになるため3000字超えても仕方ないとしてそれ以外のパートは2000字前後くらいにまとめて行きたいと思っております。


 もし物語が面白かった・続きが気になるという方は♡や⭐︎と作品・作者のフォロー、また感想をいただけるとありがたいです( *・ω・)*_ _))

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