第41話 真夏の戦い その3


 みんなが海で、はしゃいでいる中、妹の朝はパラソルの下で本を捲る。

 そんな妹の隣にオレは座り込むと、話しかけた。


「すまなかったな。この旅行についてきてしまって。正直、邪魔だろオレ」

「……」


 すると、妹は立ち上がってどこかに行ってしまう。


 ……無視か。まぁそうだろうな。分かっていた。


 気落ちする。果たして、これに慣れることなどあるのだろうか。


「……」


 落ち込みながらもオレは、妹の歩き姿をなんとなく眺める。

 そんな妹に近寄る男が3人。

 見るからに遊んでいそうな見た目の男たちだ。


 妹と男たちが話している。

 ナンパだろうか。

 ここは助けに行ってやるのがあるべき兄の姿なのだろうが……。


 男の1人は、朝の体に手を伸ばそうとする。

 しかし朝はその手首を掴み、くるりと回して男の背中につけた。


 男は苦しんで、やがてその場に倒れる。

 大の大人が、けつを突き出している姿がなんともシュールだ。


 ちなみにオレの妹は、合気道の有段者である。


 ***


「朝ちゃんも一緒に遊ぼうよ!」


 ビーチボールを持った紗世ちゃんが、ずっと本を読んでいる朝を誘う。


「私はいいわ。みんなで楽しんで」

「え〜私、朝さんと遊びたいのに〜」


 いつの間にか上着を脱いで楽しんでいるミナがそう言う。

 それに対して、朝は表情を一切動かさない。


「朝ちゃん!」

「朝さん!」

「……」


 ***


「そっちにいったわ!」


 朝も上着を脱いで、海を満喫していた。


 家族なのに知らなかった妹の意外な一面。


 ……あいつ、案外チョロいのか。

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