第23話 虚ろな世界 その5


 楽しいって、こういう事なんだと思った。


 後輩に手を引かれて、ゲームセンターに行った。


 カーレースで対戦して盛り上がり、

 ゾンビゲームで、協力してプレイし、

 今まで撮ったこともないプラクラを一緒に撮った。


 金髪碧眼の後輩が、美麗な顔でオレに微笑みかける。


「先輩、次は何しましょうか?」


 ──あぁ、楽しい。


 ***


 自販機で飲み物を買う。

 それからオレたちは備え付けられた長椅子に腰掛けた。

 すると、後輩が唐突に言う。


「先輩。あたし、先輩と結構親しい間柄だと思うんです」


 オレは後輩との関係性を改めて考える。


「そうだな。知り合い以上、友達未満って感じだな」

「あれ、もしかしてあんまり親しくなかったです?」

「冗談だ」


 後輩はジト目でオレを見る。

 とりあえずイジワルしてみたが、オレたちの親密さを表現するのは非常に難しい。

 友達の妹。

 関係性を言葉で説明するならそうなるが、それだけでは親しいのか、そうでないのかは分からない。


「で、どうした急に?」


 ぼかす意図でそう尋ねると、後輩は真剣な眼差しでオレを見る。


「先輩、悩みごとありますよね?」

「それりゃまぁ、人間生きてれば悩み事の一つや二つはあるよな」

「そうですね」


 そう言う後輩は何故かイライラしているように見えた。


「怒っているのか?」

「別に、怒ってませんけど?」

「なら、どうしてそんな顔してるんだ?」

「生まれつきこんな顔ですよ」

「いいや、お前はもっとこ生意気な顔をしてた」

「本当に怒りますよ?」


 後輩は前を向く。


「先輩の言うとおり、悩みがあることなんて当たり前のことですし、それを人に言わないのも別におかしな事ではありません。ただ──」


 後輩は、オレの腕の服を摘んだ。


「先輩ごときがあたしに隠し事するなんて、生意気です……。だから、少しだけいい気がしないのかもしれません」


 後輩は口元を尖らせてそう言った。


「……」


 可愛げのカケラもない言葉た。


 けれど、それを聞いて、オレは後輩に対して申し訳ない気持ちになった。


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