初(ファースト)デート&初(ファースト)キス

第41話

 十二月二十二日。一般人にとってはクリスマス直前の平日。だが、涼守にとっては「初デートした記念日」。女の子と初めて二人で遊びに行く。


「これって、もう。付き合ってるって言ってもイイじゃねえ? ……イヤ、ちがうちがう、この程度じゃ付き合ってるなんて言えない」


 前日の夜、涼守はのたうち回っていた。高揚しているせいか、妙に身体が熱い。


「翔琉先輩は年上、しかも超美人。デートの一回や二、いや三回……百回位しているかも。もしかしたら付き合ってるという感覚はないかもしれない。俺の事なんて暇つぶし位にしか。いや、きっとそうだ。そもそも、告白もしてない、されてない。付き合ってるって訳じゃないし」


 再びネガティブスイッチがオンになる。眠れなかった。

「でも。もし……キスすれば」


 眠れない夜、涼守は翔琉とのデートプランを練り続けていた。



 涼守のネガティブスイッチがオンになったまま。デート当日となった。



 天候も初デートを祝福してくれているかのような晴天。しかし、放射冷却現象の為か? 天気は良いがかなり寒い。息が白く吐き出される。

「……ザク」


 涼守独り言を呟く。


 新鬼隠中央ステーション「鬼隠中央駅」、鬼隠地区の中心部、繁華街セントラル、待ち合わせ場所は定番のモニュメント前。


 このモニュメントも世界的有名建築家の手によりデザインされ、観光名所の一つとなっていた。


 涼守は、ソワソワしながら翔琉を待つ。待ち合わせ時間、一時間以上前。

「来てくれなかったらどうしよう……もしかしたら」


 まだ待ち合わせ時間前なのに、涼守はすっかりネガティブモード。

「待った?」

「ああ」


 涼守が振り返ると、別なカップルの待ち合わせ。去って行くカップルを羨ましそうに見つめる。

「来て、くれるだろうか……」


 涼守の心が折れかける。



「涼守君。待っててくれたの?」


 待ち合わせ時間十五分前、翔琉到着。

「翔琉先輩!」


 すっかりネガティブモードになっていた涼守。ご主人様が帰宅した時の子犬の如く、全身喜びのオーラ、ご主人様の頬を舐めんばかりの勢い。


 翔琉のファッションは、いわゆる「ストリート系女子」っぽい、ジーンズにパーカーという組み合わせ。素材が良い(高身長・スタイル抜群・美人)が揃っているため変には見えないが、デート着としては残念至極。さらに松葉杖。


 それでも翔琉は美人で目立つ。モニュメント前の男子は全員、翔琉をチラ見した。

「変、だよね。ボク、お洒落、苦手。涼守君、どう思う?」

「え……あ」


 女子のファションチェックなんていきなり大それた事だ。どう答えるのが「正解」なのか? 涼守いきなりの試練。

「か、翔琉先輩は美人です」

「……ボク、服の事を聞いたはずなんだけど」


 しどろもどろになる涼守、だが翔琉も少しだけ頬を染めた。それから、スマートフォンを取り出し、だれかのメッセージを確認する。そして。

「ん、まだ時間、ある。ヨシ、服、見に行こう」

「え? あ、は、はい!」


 涼守の練りに練ったデートプランはその時点で吹き飛んだ。でも、服を見に行きたいという翔琉にくっ付いていけば、何とかなりそうな気がした。


 まずは、繁華街セントラルのファッションビルに入り、翔琉の服選びをする事になった。



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