第12話 幻の魔道具とダンジョン探索 -3
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7. イリスの分析とセラの奇妙な「魔力操作」
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ギミックの壊れた部屋に、イリスは冷静に足を踏み入れた。
残された魔力反応を解析しながら、彼女の瞳は鋭く輝く。
「ふむ、このギミックは……本来、魔力の流れを制御する複雑な構造だったのね」
「それが壊れた、と」
「ええ。エルミナの破壊魔法によって、魔力の経路が一部再構築されているわ…
…興味深い」
「すごいね、エルミナ!」
「セラの魔力操作も、この再構築に影響を与えているようだわ」
イリスが分析を続ける横で、セラは壊れたギミックから漏れる魔力を、自分の魔装具で奇妙な形に操作しようとしていた。
「イリス様!この魔力を応用すれば、きっと新しい魔装具が作れます!」
「ほう?」
「ほら、これで……空間をねじ曲げられますよ!『空間歪曲器』起動!」
セラは目を輝かせながら、怪しげな魔装具を構える。空間が微かに歪み、周囲の空気が振動する。
「セラちゃん!やめてください!分解も改造もダメーっ!」
「価値がなくなっちゃう!」
「なっ……空間ねじ曲げ!?それは真理魔法の領域だわ!
危険よ、セラ!
勝手にいじらないで!」
「あらら、データが乱れてるわ!」
フィーネが息を切らしながらセラの手を掴もうと必死になるが、イリスまでが焦った声を上げる。しかし、セラはイリスの言葉にも耳を貸さず、夢中だった。
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8. アリスの歌と混乱の連鎖
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セラの魔力操作によって、ダンジョン内に奇妙な空間の歪みが生じた。その混乱の中で、アリスが楽しげに歌い出す。敵の魔物たちは、その歌声と歪んだ空間に影響され、奇妙な動きをし始めた。
「まずいです!セラちゃんの魔力操作で空間が歪んでます!
敵の魔物まで変な動きに……!」
「フィーネちゃん、大変だね!」
「これ以上、混乱させないでください!」
フィーネが絶望的な顔で叫ぶ。
「これは最高にロックだぜ!
盛り上がっていこうぜ、みんなー!
パーティータイムだぜ!」
「アリスさん!歌わないでください!
余計に混乱するだけですからーっ!」
アリスはフィーネの悲鳴にも構わず、リュートをかき鳴らし、高らかに歌い続ける。
「頼みますから、これ以上、被害を増やさないで!私の利益がーっ!」
魔物たちはアリスの歌声に合わせるかのように、変なダンスを踊り始めた。
「グギギ……!体が……勝手に……!ノレる……!」
「最高だぜ、魔物ども!」
ダンジョンは、もはや戦場というよりは、奇妙な宴会場と化していた。
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9. 無自覚な連携、ギミック解除
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セラの奇妙な魔力操作、エルミナの破壊魔法、アキナの猪突猛進、リリアの方向音痴、ルナのフリーズ寸前の情報、アリスの混乱の歌……これら全てが複雑に絡み合い、偶然にもダンジョンの最深部にあった「幻の生命の炉」のギミックが解除された。
炉は無傷のまま、美しい光を放っている。
フィーネは、その光景に呆然と立ち尽くした。
「……え?ギミックが……解除……?
しかも……無傷……? なんで……?私の計画は……」
フィーネの言葉にならない呟きに、イリスが驚きを隠せない顔で眼鏡をくいっと上げた。
「信じられないわ……
セラの魔力操作による空間歪曲効果と、エルミナの破壊魔法、そしてアリスの歌による魔力攪乱が、偶然にもギミックの解除条件を満たしてしまった…
…ありえないわ……!」
「これって、もしかして……」
「これは、新たな法則の発見かもしれないわ!」
イリスの言葉に、セラは目を輝かせ、炉に駆け寄った。
「やりました!生命の炉です!これで分解して研究できます!」
「(食い気味に、セラの手を掴み)だから分解はダメですーっ!
これは売るんです!売るんですよ!」
フィーネが必死にセラを止めようとする。アキナは、周囲を見回しながら首をかしげた。
「よっしゃー!やったな、みんな!これでボスを倒せるぜ!
……って、ボスはどこだ?」
「ボスはいないよ、アキナ」
アリスは呑気にアキナに答えた。
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