第3話 閻魔さまの広間

 広間には、多くの死者が長い列をなしていた。列に並ぶ者たちは、不安げな表情で順番を待つばかりで、他人に対する興味は微塵も見られなかった。


 しかし、その場には他に興味深い存在がいた。 それは、ふかふかの毛並みを持つ馬と牛であった。


 彼らの毛に触れることで心が癒されるのだろうか。広間は、不安と緊張に包まれた魂たちにとって、最後の安息の場のように感じられた。アリサは馬と牛を手で触った。


「何という感触!!」

 

 異次元の柔らかさに圧倒されたアリサは、馬と牛の毛に顔を埋め、このままずっとここに留まりたいと願った。

 

 しかし、しばらくして彼女は我に返る。こんなところで時間を浪費するわけにはいかない。

 

 後ろ髪を引かれる思いを抱えつつ、その場を後にしたアリサは、死者たちが作る長い列をかき分けながら前へ進んで行った。


 閻魔さまの傍に門番とは別の鬼たちが数人立っているのが見えた。彼らの眼光は鋭く、その存在感だけで震えが止まらない死者もいた。


 そんな中で誰かの審判が終わったようだ。そして、次の者が呼ばれ、アリサは静かにその様子を伺うことにした。

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