知人の経験、オフィスラブ。

崔 梨遙(再)

1554文字。お読みいただけたら嬉しいです。

 僕が佳子と出会ったのは、僕が31歳、佳子が40歳の時だった。僕が勤めていた会社に、パートで佳子が入って来たのだ。佳子は僕のアシスタント、営業事務をやることになった。


 佳子は美人といえるだろう。好みにもよるかもしれない。正直、『美人だけど、僕の好みじゃないなぁ』というのが第1印象だった。だが、雅子はスタイルが良かった。フィットしたニットを着ていた佳子のボディラインがよくわかる。佳子は胸は大きいのにウエストはくびれていた。脚も長かった。身長は165だと言っていた。ちなみに僕は169センチ。佳子の髪は長い黒髪だった。


 佳子は僕の部下になったが、よくミスをした。朝、あるいは前日、やってほしい仕事を頼む。僕が営業から帰ってくると、佳子は嬉しそうに仕事を提出してくる。そして自分の席に戻ると嬉しそうにチラチラとこちらを見る。僕にはわかっていた。佳子は褒めてほしいのだ。だが、必ず1つか2つミスがある。僕も褒めてあげたかったのだが、ミスが見付かったら褒めてあげられない。ミスを指摘すると、佳子は明らかに凹むからかわいそうだった。


 或る日、廊下で佳子と立ち話をした。佳子は『40歳の時に運命の出逢いがある』と占い師に言われたこと、この会社に来て、占いが当たったと思ったこと、旦那と子供はいるが、旦那には何度も浮気されてもう旦那を愛していない。などということを話してきた。その時、僕は思った。『佳子を自分のものに出来る、佳子を都合のいい女にしよう』と。


 翌年、ミスの多い佳子が会社で居づらくなっていた時に僕は独立した。個人事業主になった。2LDKの自宅兼オフィスに、佳子を事務員として呼んだ。佳子は喜んで僕の元へやって来た。


 それは、佳子が自宅兼オフィスに初めてやってきた日。僕は佳子を寝室に連れ込んだ。ベッドに佳子を座らせた僕は後ろから佳子を抱き締めた。


『そんな、ダメですよ』

『じゃあ、胸だけ。ずっと、佳子さんの胸を見たかったし触りたかったから』

『・・・』


 佳子の胸は思っていたよりも大きく、そして形が良かった。その日、僕と佳子は初めて結ばれた。


 翌日から、毎日求め合うようになった。午前中は愛し合い、仕事は午後からだった。


 その内、僕は佳子を独占したくなった。そこで、探偵事務所に依頼して佳子の旦那の身辺調査。やっぱり、何度も浮気する男は、懲りないようでスグに浮気の証拠が揃った。それを佳子に見せたら、佳子はいよいよ離婚を考え始めた。だが、佳子には1つ、迷いがあった。


『何を迷ってるの?』

『旦那と別れた後のことが不安で』

『離婚したら、僕が佳子を嫁にもらうよ』


 その言葉が引き金となって、佳子は本気で離婚を旦那に迫った。それなりの金額の慰謝料をもらったが、親権はとられた。規定期間が過ぎて、僕は佳子と結婚した。佳子が42歳の時だった。


 佳子は頑張って43歳で僕の子を産んでくれた。男の子だった。更に、46歳で女の子を産んでくれた。


 佳子を都合の良い女にしようと思っていた僕だったが、僕は佳子に惚れてしまったのだ。佳子を初めて抱いた時には想像もしなかった展開。だが、それでいい。僕は嫁と2人の子供達、暖かい家庭を手に入れたのだ。僕は幸せになれた。ひたすら佳子に感謝している。僕は佳子を抱くようになってから、他の女性を抱いていないことに気付いた。僕は浮気もしていないのだ。


 振り返ると、佳子が40歳の時に出逢い、41歳の時から結ばれ、42歳で結婚、43歳と46歳の時に出産という流れになった。佳子は仕事はミスが多かったが、嫁として、母としては完璧、100点満点の女性だった。


 月日が経って、僕は51歳、佳子はとうとう60歳になった。それでも、僕達は毎晩求め合うし、ご近所から羨ましがられるほどラブラブだ。



 というのが、知人の人生。人生はいろいろだ。







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知人の経験、オフィスラブ。 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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