第13話 財布を捜索!

 ま、まずいまずいまずい!あれは母さんから誕生日に貰った大事な財布なんだ!黒地に白い糸で俺の名前が刺繍されてて…。


「街に入って来るとき、門で通行料を払いましたよね。」


「じゃあ落としたのはこの街の中でだな。」


 タナとハイゴズが言う。確かに…。でもそこから財布は出してない。置き忘れたり、落とすわけもないんだが…。


「スられたのかもしれないですね…。」


「なんだと!許せん!」


 コージはそう言って近くの怪しそうな人間を片っ端から問い詰めていく。お前の顔怪しいぞ!こっちで鞄の中身全部見せろ!


「タナ、ライヒ。このままだとスリを捕まえるどころか、コージが不審者として通報されちまう。アイツを止めるぞ。」


◆◇◆◇◆◇


 あれから皆にたしなめられて穏便に調査をしたが見つからない…。日も暮れてきた。もう一生見つからないのかな…。


「っ!あの人が持ってるの、コージさんの財布では!?」


 ライヒが指し示すのは清楚そうなメイドさんだ。屋敷のおつかいかな?いやいや、まさかあの人がスリなわけ…。


「ほ、本当だーっ!!」


 よく見たらあの人が持ってる黒の財布、バッチリ俺の名前が書いてあった!偉いぞ、良くやったライヒ!


 俺は全力でお姉さんのところまで走り、彼女の腕を掴む。


「あの!それ俺の財布ですよね!?俺からスりましたよね!?」


 どんな言い訳をしてきても無駄だ!絶対に論破して、罪を認めさせてやる!


「はい、そうですね。」


 メイドさんは肩辺りまで伸びたサラサラの髪を触りながら答えた。いや、認めるんかーい!俺のパーティのみんな呆然としてるよ!

 騒ぎを聞きつけて人が集まってくる。


「あのメイド、またなの?」


「まったく、あそこのお屋敷の教育はどうなっているのかしら。」


 …どういうことだ?このメイドさんは初犯じゃないのか。


「すみません、通していただきたい。」


 人の波をかき分けて来たのは50代くらいのおじさまだ。ハイゴズと違って髪も髭も整えられてる。


「ご主人様…!」


 メイドさんは今までの死んだ魚の目が嘘のように笑顔になった。なんだ、お、俺は権力には負けないぞ!絶対に財布は返してもらうんだ!


「うちのバカメイドがご迷惑をおかけしました…!」


 すごく綺麗な90度のお辞儀。到底権力者とは思えねえな。このメイドさんに振り回されてんのかな。


「どうかお詫びをさせて頂きたい。我が邸宅までご案内します。」

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