第11話 優しさを覚える少女
あの後、男をギルドに引き渡して俺たちは宿屋に向かった。タナとの相性が悪かっただけで、彼も周りを傷つけるつもりはなかったのだろう。
今日は宿屋で寝泊まりし、明日は朝一番にここを出発する予定だ。けれども何だか眠れない。
「コージ」
フラフラと宿屋の建物裏を歩いていると、前方の人影から名前を呼ばれた。この声は…タナだ。
「こんな時間に外でちゃ駄目だろ?一緒に戻ろう。」
まだ夜の散歩を楽しんでいたかったが、帰れと言う俺が帰らないのでは彼女に示しがつかない。
それにやばくね?こんな夜中に男女で一緒にいたらハイゴズあたりに絶対からかわれる!デートしてたと勘違いされる!
世の中の17歳男子はむしろこのような状況をチャンスと思う人のほうが多いだろうが、コージはヘタレで意気地なしなのでできなかった!
タナの手をひいて来た道を戻る。しかし、途中で歩みを止めた彼女は俺の服の裾を引っ張った。
「ギルドでは…助けてくれてありがとうございました。」
コージは服の裾をつかむ彼女の手が細かく震えているのに気がついた。
そうだよな、きっと怖かったよな。いくら同じ人間に近い身体を持っているとは言っても、狼と牛は捕食者と被捕食者の関係なんだ。
「お前が困ってるときは何度でも助けるよ。なんてったって俺は勇者になる男だからな!」
誰もが心から安心できるような、そんな満面の笑みを浮かべたコージを見て、タナはとうとう泣き始めてしまった。
「な、泣かないでくれ…。」
「私…村ではいつも頼れる人なんか居なくて、でもコージやハイゴズ、ライヒは優しくしてくれる。ギルドのお姉さんも宿屋のおばあちゃんだって優しい。」
両手でどんどん流れる涙を必死に拭いながらタナは続けて話す。
「この優しさに慣れちゃったら、もう戻れなくなっちゃいます。際限なく欲張っちゃいます。私、悪い子になっちゃうよ…。」
「良いんだ。それで良い。」
コージはタナの肩に手を置き、自分と身体を向き合わせる。真剣にタナの瞳を見つめる。
「色んな人から優しさを教わったら、今度は別の誰かに優しさを教える。その繰り返しで世界は平和になるんだ。」
さ、部屋に帰って早く寝よう。明日は早いぞー!そんなことを言ってコージは歩き出す。タナは彼について行きながら先ほど言われた言葉をずっと思い返していた。
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