放課後の雑談
放課後の教室。
生徒が疎らにいて、話し声が遠くで聴こえる。
読書をしているメルヴィン。ページを捲る音。
風が吹いて、カーテンレールが滑る音。
カーテンが煽られる布の音。
運動部の掛け声。
野球部のボールがバットに当たる金属音。
ページを捲る音。
教室の扉が開く音。
足音が近づいてくる。
「珍しい。まだいたんだ」
椅子を引いて座る音。
ノートを出そうとする。
「書かなくてもわかるよ。どうして私がまだいるのかってことでしょ?」
メルヴィンは頷く。
メルヴィンの机に頬杖をついて彼を見つめる。
開いてた本を閉じる。
「ちょっとね」
言葉を濁され納得がいかないという顔をしてる彼を見て笑う。
「何その顔。いつもより無愛想。んー…聞いてもつまらないよ」
首を振る。
どうぞ、というように机を爪でこつこつと叩く。
「下駄箱まで行ったの。んで、手紙が入ってて」
言いづらそうに言い淀む。
コツコツと机を叩く音。
「こんな私でも好きになってくれる人がいたみたいでさ…!さっき、その…だはぁ参っちゃうね…っ!」
机の上に突っ伏す。
メルヴィンはシャーペンをノックし、文字を書く。
それに気付いた紫藤はペン先を追う。
「きみは、すてき、…な…ちょっとちょっと!そんなことよくもまぁさらっと言えるね?……えと、わざわざ、ぼくに構って、面倒ごとを引き受けて。違うよ、私がしたかったし、話したかったから」
文字を書く音がまた始まる。
「ぼくに構うのは、もうしなくて…いい。なんで急にそんなこというの…?」
ペンが止まるが、また動く。
「…っちょっとちょっとなんでそうなるの!?付き合わないよ!」
顔をあげた時、思ったより近くて互いびっくりして離れる。
「ごめ…。(深呼吸)あのね、告白されたからって付き合うかは別。…なに?…すきな、ひと、いるの?メル、メルさんや!割りとそういうの聞くタイプ?解釈違いです!」
「この前、友人に、愛を囁いてきたといっていた、から。ぼくをそういう人だと認識して、いたんだろ?…あぁ確かに捏造してきたけど、その後訂正してきたじゃん!」
また文字を書く。
しばらく紫藤は答えない。
爪で机をノックする。
「な、なんて言ったの?え……どんな羞恥プレイ?……ボイス担当が、なにをしたか、確認するのは、当然?出すぎた真似をしましたっ謝罪会見を…(机をコツコツ叩く音)催促されてもこればっかしは言わないよ!」
溜め息をつくメルヴィン。新しいページを捲り文字を書く。
「どうして、教室に戻ってきた、の?…メル、まだいるかなって思って」
再び書いた文字を紫藤に見せた後、パタンとノートを閉じて帰り支度をする。
「え、えっ」
すっと立ち上がり鞄を肩にかけて歩き出す。中々こない紫藤を振り返る。
「どういう風の吹きまわし?あぁ待って待って!一緒に帰ります!」
二人分の足音が教室から出ていき、ドアを閉める音。
「明日から三連休だね!メルは休みの日、何してるの?あ、待って。私わかる。わかるよ、なんてったってメルの声だからね!ずばり読書…ぇっ違うの?え?じゃあなにするの?メルは一体なにをして過ごすの…?因みに私はね、録画してたドラマを見るの!知ってる?火曜日の夜にやってるドラマ…。見てない?恋愛小説読んでるならメルも好きかも。あ、メル映画とか観に行く?さては三連休に行く?当たった!この前読んでたファンタジーの本、あれ原作だよね?今、映画で上映してるやつ。いやぁ、わかっちゃうんだな、私ってば」
紫藤は立ち止まり、メルヴィンに振り返る。
「喉、しっかり休めてね?無理しないように。連休明けも声が出なかったらまた声担当するから!…メルと喋るの楽しみにしてる。ありがとう、一緒に帰ってくれて。正直、一人で帰る気になれなくて…。メルがいてよかった。また来週ね!ばいばい!」
走り去ってく足音。
遠くで踏み切りの音が聴こえる。
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