<第一話「小説家」から第二話「文明開化の音がした」までを読んでのレビューです>
物語は、小説を書くという行為そのものの意味を正面から論じる独白から始まる。そこに挿入される会話劇は、現実世界の軽妙な居酒屋の情景であり、硬質な思想の後に置かれることで強い対比を生んでいる。続く第二話では、古典文学と最新のVR技術が並列され、人間の読書体験そのものが時代に合わせて変質していく様子が描かれる。言葉は冗長に見えて必然を帯び、硬質な思索と平易な描写が交互に現れることで、作品全体に独特のリズムが生まれている。
印象的だったのは、「たった一行のために小説家はその人生を懸け一冊の背景を作る」という一文。小説を装飾や娯楽としてではなく、人生そのものの凝縮と捉える視点が提示されており、作品の根底に流れる思想を最も端的に示している。
読み進めるにつれ、この作品は単なる「小説論」や「未来SF」ではなく、人がなぜ物語を必要とするのかを多角的に描き出そうとしていることが分かる。その構成の妙と文章の硬質な響きが、読み手に長く残る手触りを与えていた。