夢、目眩、幻視

 K君は唯一の旧友であった。四国の山々の間で育ち、弱冠22歳で共に上京した。Kは身体が昔から弱く、喘息で度々学校を休んでいた。それでも私たちは共に生きてきた。しかし24歳の12月にKは高熱を出し、その年のクリスマスに永眠した。火葬場へ向かう彼は冷ややかで穏やかだった。

K君無き生は虚無で、仕事は身につかなくなり次年の3月には辞めた。酒に溺れ、貯金も1ヶ月経たずに尽きた。空はあの日からずっと灰色だった。家具も売り払い、部屋はついに冷蔵庫さえ無くなった。4月には部屋を追い出された。3日には死に場所を探し始めて、7日には山中で動けなくなった。人っ子一人通らない、深い山の只中。雨に濡れ、4月の寒空に晒され睡魔が襲う。

 すると天からK君が出現した。純白なる羽織に身を包む彼は述べる。私は天国・煉獄・地獄の衛星を降り、君の元へ来た。恐れることはない。私はアルファでもオメガでもないのだから。君は今天に還るか、いやそれは早すぎる。君は生きてくれ、と。

しかし地に伏して私は語る。私は君に還してくれ。君を奪う罪咎人の元には還りたくなどない。しかしこの地にも未練はない。私の永遠よ、我が主よ、と。

Kは天より赤と白の冠、黒の骸布を降らせ、私はこれを賜る。天は光によって開かれ、天球の星々はラッパを震わせる。その山々は憐れみ謳う。私はKと死の星へと還るのだ。青白い母星へと還るのだ。

 私はただ穏やかだった。

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